ポケ迷宮。
ネッツの端っこにあるヴィオののんびり日記的な旧時代的個人ブログ。大体気に入ったゲームについて語ってます。
それは、
国境を越えて
手紙を届けることもあるノエルが、
よく知っている感情だ。
ドラガリ2.5周年おめでとう!
ドラガリ小説3本目になります。
ノエルとノーストンが出てくるお話です。カップリングではありません。
それぞれのキャラスト、スヴェニトラ組のネタバレを含みます。
それでは、「爪痕を覗いた日」です。
爪痕を覗いた日
「ノエル、隣良いですか?」
明け方の外廊下にはいつも人がいない。
いや、正確にはこの聖城で朝早くに起きる人自体は結構いる。でも大抵は、中庭に武器を振りに行ったり、体力作りの一貫で走り込みをしていたり、菜園の様子を見ていたり、その風景は目前の広い原っぱの中に見られることが出来た。少し離れた所に座っている自分もその風景の一部なのだろうけれども、風景画にするなら額縁からぎりぎりはみ出るくらいの所にいるのだろうなと思う。
そんな明け方の外廊下自体には人がいない……はずだったのだけれど。
「あ、あの……」
手元の本から視線をあげると、大仰に荷物を持った青年がいた。V字の白いシャツの上から、ダークブラウンのコルセット、トマトレッドのジレを羽織り、ネイビーブルーのパンツ、これまたトマトレッドのブーツと同色の革製の肩掛け鞄……と、落ち着いた配色の服装を細身の身体に着込んでいる。
そんなわけで、どちらかと言うと直視してしまったのは彼の手元の方で、脇には画版と紙の束を抱えバケツを手にし、もう片方の脇には陶器のお皿のような物を挟んでいた。恐らくパレット、というやつだ。何やら細かな柄の入ったカフスボタンが手首で小さな宝石のように輝いている。
「え、えっと……」
「すみません、お邪魔でしたでしょうか」
服装の印象通りの落ち着いた声色で、自分の口が回らない間に彼に――ノーストンさんに謝られてしまった。慌ててノエルは何も悪くないですと首を横に振る。
「邪魔じゃ、ない、です……」
「良かった、静かにしていますので」
そう言うと、彼は同じ長椅子に腰を下ろした。胸元まで伸びる癖のある青紫色の一房に束ねられた髪が、ふわりと後を追いかける。毛先は少し色素が薄く、空に溶けてしまいそうだとノエルは思った。
頭の上にはその髪と同じ色をした、同じくらいの長さの耳が乗っていた。森の民フォレスティアを表す兎のような耳だ。左耳に付いたピアスが、ノエルの角度からちらりと見えて、視線が誘われる。
四人程、頑張れば五人程が座れる長椅子に、ノーストンさん、ノーストンさんの荷物、ノエルと適度な距離を保って並んでいる。手元の本から視線を僅かに外せば、彼の作業は視界に映る。
自分の読んでいる本の続きだって興味深いけれど、なんて少し言い訳がましいことを考えていると、
「オレのことは気にしないでください」
と見透かされたように言われてしまった。
彼の職業は絵本を描くことである。今広げているのは、そのための小道具だ。紙の束だったり、素人目には判らない様々な種類の筆や絵の具の容器等、画材が足元や長椅子に並んでいる。
気にしないでくれと言われてつい頷いて反応してしまったが、昔から本を読むのが好きだったノエルにとっては、興味が出ないはずもない。絵本だって幼い頃から親しみがあるし、この歳になって読むと別の面白さがあることをよく知っている。
悩んだのは寸刻で、手元の本をちまちまと読み進めながら、ノエルはノーストンさんの作業を横目でこっそり眺めることにした。
まずノーストンさんは、シャツの袖を何度か捲って二の腕まで露わにする。それから、足元に置いた肩掛け鞄から青と黒と白の絵の具の入った陶製の容器を開けてパレットに並べる。
彼は平べったい大きな筆を手に取るとほとんど黒に近い瑠璃紺色で紙の上部を塗りたくった。それから少しずつ青色に白を足しながら、下の方へどんどん海を広げていく。そうして白い紙が何段もの青色に染まっていった。そこまで来て、目前の景色から察するにこれは海じゃなくて空なのだろうと思った。
次に刷毛のような筆を手にしたかと思うと、撫でるように紙面の上を飛び回る。ムラのあった空の色が段々と溶け合って、現実に広がっている同じような夜明けが出来ていく。
それからノーストンさんはバケツで筆を洗って、毛先の整った太い筆を取り出した。
左半分に不格好な茶色い線が幾重にも重ねて描かれ、これは樹の幹だろうか。繰り返し筆を動かすと色が乱雑に重なっていき、地面から生えて何十年と経ったかのような風格を感じた。
その樹木の横に何かが形作られる。やがてちょこんと描かれたのは、お座りをしている小さな薄茶の獣の姿のようだった。耳がぴんとしていて、ふわふわの尻尾が確認できる。犬、かな……。
「これは狐ですね」
「あ、きつね……」
横顔をよく見ると瞳孔が縦に長くきりっとしている。若干汚れた毛並みが野性を感じさせており、人懐こい犬とは確かに違う種類のものだ。犬とは違うのに納得が……。……もしかして、声に出ていたのだろうか。
気付けばどうやらノエルの身体が、長椅子から斜め四十五度くらい傾いて、ノーストンさんの方に向いていたらしい。急に恥ずかしくなって慌てて姿勢を正し、本に視線を移す。改めて本を眺めるが、ずいぶんと文字が情報として頭に入っていなかったらしい、自分が覚えていた場面よりも時間軸が飛んでしまっていて、内容が全く頭に入らなかった。加えて、身体の中の血が羞恥という火で沸騰してしまっている感覚も、一向に抜けない。
「良ければ見ますか、ノエ――」
「い、良いんですか……っ!?」
飛んできた彼の声を遮って滑り気味に発声してしまった。
ノーストンさんは驚いて目をぱちくりさせた。自分もそんな事を言うつもりは無かったので、身体の芯から締め付けられたような感覚がして縮こまってしまう。
でも、彼はすぐに黄金色の眼を細めて柔らかく笑った。
「構いませんよ。せっかくなので、何かお話でもしながら」
彼の瞳も描かれている狐と同様に少し瞳孔が細く見た目では鋭い印象を受けるが、物腰から口調まで穏和な人だ。
筆を足元の水の入ったバケツで一度洗って、別の筆を手に取った。男性の手であるから、もちろんノエルのそれよりは角張っていて、幾分か大きく見える。でもその手から紡がれる世界はすぐに握り潰される程に繊細で、そして彼にしか産み出せない美麗なものだ。
「ノエルはスヴェニトラの伝令兵なんですよね。あの雪国の軍事国家の」
話しかけられて軽く頷いたが、彼の視線は手元にある。言葉で返さないと気付いてもらえない、半拍遅れて「は、はい」と返事することになった。
「実はオレ、スヴェニトラに行ったことがあって」
「え、そ、そう……なんですか?」
「はい、オレも北グラスティア出身なんです。国もいくつか回ったことがあります」
その発言にノエルは二点、驚いてしまった。
一つはフォレスティアの民はあまりヒューマンの街にいない。森の民と呼ばれるだけあり、普段は自然の中で暮らす事の多い種族であることだ。『国を回る』フォレスティアは珍しい。そういえば、フォレスティアが統治して王政を敷いている国もあったはず。もしかすると、彼はそこの出なのだろうか。
もう一つは、北グラスティア大陸から現状、南グラスティア大陸との行き来はあまり多くはない。北と南は対立していたり、謀略絡みでお互い利用し合っているような関係であるからだ。
意外な青年の経歴にノエルが目を丸くしているうちに、ノーストンさんはスヴェニトラを訪れた時の話を続けていく。
「山の上から眺めた、一帯に白い雪に染まった風景は、今でも忘れることは出来ません」
「わたしも……、朝起きて、太陽の光が、反射して……綺麗って、思います」
「ええ、息を呑むような景色でした。無数の白が支配した世界……とでも言うのでしょうか、あの景色を表現する言葉を、オレはまだ知りません」
雪国を舞台とした絵本もいつか描きたいんですけどね、とノーストンさんは筆をバケツに入れ、先程よりも幾分にも細い筆を鞄から取り出して、パレットに塗られた黒い絵の具をつける。
「そういえば、宿に泊まった時に雪かきを手伝わされたりしたのも覚えてるんですよね。男手足りないからとか言われて」
「あ……雪、積もると、大変……ですから。家から、出られないことも……あります」
「ええ、その時、雪は綺麗なだけでは無いのだと痛感しました」
年中雪に覆われた土では何も生えないし、そもそも日光が出る日だって多くは無く、気が滅入ってしまう人も多い。山海にも資源がほとんど無いという実情もある。スヴェニトラが厳しい環境にあるのだということは、そこに住むノエルにはうんざりするほど理解している。
「景色だけじゃなくそこに暮らす人々もよく覚えています、宿のおばあさんは雪かきを手伝った後、温かいスープをくださって。そうそう、そこのお孫さんが双子で、元気いっぱいで可愛らしくて」
楽しそうに話す彼の頭の中には、ノエルが慣れ親しんだあの国の風景が浮かんでいるのだろう。馴染み深い服装、建物の様式、そして静かな幸福に笑いあう家族。戦の中であっても、そんな景色だってある。
あまりそういう地元の話をしたことのないノエルには少しこそばゆく感じた。
「好い人ばかりでした。本当の目的なんて忘れてしまうくらいに」
「目的……?」
「……あ、いえ、なんでも」
そこで何か口走ったことに気付いたようで、ノーストンさんは取り繕うように言葉短く続けただけだった。その間にも、絵の中の狐には耳と手と鼻と髭と足されて、紙に現れた何かだった物体に命が創造されていく。狐の横顔は凛々しく、何処かギラついた欲のようなものを湛えていた。
「……」
会話が突如寸断されると、その気まずい空気を埋めるように周囲の音が二人の間を流れていく。夜明けだった時間はとうに過ぎて、照りつける陽光はだいぶ上り、早朝から朝とも言うべき頃合いになっていたせいもあり、起床する者も段々増えているようだ。城からは物音が度々聞こえるが、未だ中庭に出てくる物好きは少ないし、いてもこんな額縁から外れたところにあるような外廊下まで来る者はいない。
何か言わないといけないと頭の中を慌てて引っ掻き回してみたが、中々話題が見つからなかった。元々喋るのが得意でもないので、天気の事とか、昨日の夕飯の話とか、するにしてもそういう話しか浮かばない。そういう話、で良いのだろうか。居心地が良かったはずの長椅子の隅っこは、なんだか軍採用試験の待機時間を思い出すくらい窮屈さを感じた。
「……気にするな、なんて言うと、気になりますよね」
上体を曲げてばしゃばしゃと足元のバケツで筆を洗いながら、ノーストンさんは呟いた。結われた青紫の髪が表情を隠してしまっていて、彼が今どんな表情をしているのかノエルには判らなかった。色素の薄い毛先が、彼の身体の動きに従って不安定に揺れている。
しかしそれも刹那の事で、ノーストンさんは顔を上げ、筆を置いて空いた両手で画板をちょっとだけこちらに傾けた。描きたての絵は明るくなり始めている空の光を反射して、鮮少ではあるが艶やかに輝いている。
「この夜明けの絵……ノエルにはどういう風に見えますか?」
「え? そ、その……」
なんと言ったものか、間違ったことを言ったら怒られたりしないだろうか。
答える事に恐怖が無かったわけではない。でも、彼の真剣な眼差しを見て、ノエルは唾を呑み込んで正直に伝える。
「狐が、何か決心、している……ところ……ですか?」
ノーストンさんは目を見開いて、「……物語の流れや字が無くても本当に当ててもらえると、嬉しいですね」と呟く。
「ええ。孤独な狐が、助けてくれた人間にお礼を言うことを決意をするところ……なんですよね」
なるほど、狐は狡猾で警戒心が強い生き物だと聞いたことがある。となると、人懐こいということも無いのだろう。この場面はそんな自分の殻を破って前に進もうとするシーンなのだ。人付き合いの苦手なノエルは少し羨ましい、とさえ思う。
なんとか質問の答えを当てたことに胸を撫で下ろしていると、彼は絵をノエルとの間に置いて、新しい白紙を画板の上に乗せた。
「オレがこの城に来る前にこの絵本を描いていたとしたら、この狐は助けてくれた人間をズタズタにしていたでしょうね。その本にもオレはこう書いたでしょう、『めでたし、めでたし』と」
「え……?」
淡々と話すノーストンさんの声にぞっとする。今までの彼の穏和な印象からとても紡がれるような内容だとは思えなかった。すぐそこに転がっている狐の絵が忽ちにでも動き出して鋭い爪を剥き出しにして襲い掛かってくる錯覚が見えた気がした。
ノエルの目の前で彼はまた筆を取り、毛先に絵の具を付ける。その筆が一回、二回と紙上を泳ぐと、瑠璃紺の空が広がっていく。世界が造られる様は神秘的で、視線が吸い寄せられてしまう――たった今の会話の内容を一時でも忘れてしまいそうになる程に。
絶句するノエルを、ノーストンさんは一瞥する。
「オレは、恐ろしい話しか描けなくなっていたんです」ノーストンさんは平面な空へ、希薄な声で喋っていた。「オレのいた国は、小さかったけれど良い国でした。でも戦に巻き込まれて、戦況もどんどんと悪くなって……オレも最初は希望を持って絵本を描いていました。でも、どれだけ物語の中で希望を望んでも、現実は何も変わらなかった。……そして、そのまま国は滅びていきました」
滅びた。その単語を聞いて、ノエルの脳内にいくつかの国を想起させた。どの国の事かは判らない。だが、次の一言でそのいくつかの国から、明確に浮き出てきた国があった。
「ノエルの国を……悪く言うつもりはないんです」
そう華奢に笑ったのを見て、何かがすとんと落ちた。
きっと彼の中では昇華されているであろう感情は、それでも未だに奥底に渦巻いているのだろう。特に、自分のような人間を見た時は。
「すみません、朝からこんな話をするつもりでは……困りますよね」
彼は、自嘲する。眉を下げて、力無い声が冷たい朝の風に浚われていく。その顔を直視するには痛々しくて、ノエルの身体の奥に針が刺されるような痛みが走った。
「そんなこと……っ!」
間髪入れず自分の背中から説明できないエネルギーが働いて、勢い余って長椅子から腰をあげていた。膝に乗せていた本が軽い音を立てて石畳の上に落ちる。
「の、ノーストン、さん、はっ……!」
立った勢い任せに喋ろうとするものの声帯が上手く震わず、ぱくぱくと口が動くだけ。正確に……正確に伝えなきゃいけないと思うと、便宜良い陳述が出てこない。
(でも……伝えなきゃ……!)
話を聞いていて、思ったことがある。
彼はうんと真面目で慎ましい人だ。話しぶりも丁寧で、自分みたいな口下手な人間にも気後れしないで話してくれて……スヴェニトラの話も、自分のために合わせて話してくれたのだろう。
遺恨が無いはずはない。過去の戦禍を今でも奥底に抱えてしまっているけど、そんなもの一切出さずに彼は会話しようとしてくれていたのだ。
そんな人だからこそ、きっと。
ノエルは懐からいつも持ち歩いている紙と鉛筆を手に取った。鉛筆を、滑らせていく。
「ノエル……?」
座っているノーストンさんの元へ歩を進めた。自分の五体が太陽光を人の形に受け止めて影を作り、ノーストンさんに覆い被さる。
『ノーストンさんは、苦しかったんですよね』
そう書いた紙を、ノーストンさんの顔面に突きつける。唐突なノエルからの発信に、彼は目を見張った。
答えを待たずに、また紙を捲って文字を書き込んでいく。
『自分の抱えていた気持ちに、後悔に、ずっと向き合い続けて、苦しかったんですよね』
彼は気まずげに顔を逸らした。緩やかにカーブする青紫の髪が追随して揺れ動く。
「……そんな、立派なものじゃありません」言下、眉を寄せる。「後悔と現実を受け止められる程、オレは強くはなかった。苦しさは自分ではどうにもならなくて、吐き場所を探しに行ったんです……最低な奴ですよ、オレは」最後には、自虐の笑みすら浮かべて。
そこまで聞いて理解した。ああ、確かに一緒だと。彼がスヴェニトラで出会った人に対して、好い人達だったと感じた。その感覚を、ノエルは彼に対しても感じていた。
多分、それは共感だ。
ノエルは今、ノーストンさんに共感している。
気持ちが解るなんておこがましい事は言えない。でも、育ちも考えも違う人であっても、言葉を交わし笑い合う事が出来る。時には解り合えず怒って対立してしまうこともある。でも反省して仲直りだってすることも出来る――お互いが相手のことを想う事が出来る。そういった感情のやり取りは何処にいても変わらない。
それは、国境を越えて手紙を届けることもあるノエルが、よく知っている感情だ。
「ノーストン、さんは……最低じゃないです。だったら、何で今、絵本を、描いてるんですか……? 悲劇、じゃない……ハッピーエンドの、お話……」
「……どうしてだと、思いますか?」
彼は問い返してくる。狐の毛と同じ色を持った瞳孔の細い瞳が、表情を消して真っ直ぐノエルを見上げてくる。さっきの話にあった人間をズタズタにするという狐の話が一瞬でも脳裏をよぎるが、そんな物騒さは感じなかった。どちらかというと、ヘレン(ヨアキムさんが飼っているわんちゃんで、ノエルの腰くらいの大型の犬だ)に餌を懇願されている時のような、自分の手元に無いものを本能で求めているような、そんな視線だった。
先程の彼の答えは、確かにノエルの中にある。微意なものではあるが、彼はそれを求めている。
「自分の、気持ちを……伝える方法……は、どんな形でも、構わないから……」
意を決してノエルは視線を投げ返す。
「自分に、出来る、こと……わたしも軍で、伝令を、精一杯やって、ます。ノーストンさんも、今を、未来を、良く、したかった……そうだった……ですよね?」
最初は彼の近くにいた子供達の笑顔のために、空想の世界を描いてきたのだろう。
物語の中で希望を抱いていたのなら。解り合える事を描いていたのなら。
「現実は、悪いことだけじゃ、ありません……それを、あなたは、知っているから」
一気に思っていた事を吐き出したせいで、心臓が走り終えた時のようにどくどくと鳴って血液を体中に流しているのを感じた。無意識に握り込んだ小さな紙束に皺が寄る。
「……そう、ですね」
ノーストンさんが空を仰ぐ。千切れた雲が無数の色彩を生み出している空へ向いているその瞳は、絵の中の狐みたいに小さな決意の炎のようなものを含んでいた。
「あなたの気持ちが、聞けて良かった」
もたげた頭を戻してぽつりとそう言った。ノエルもそれを聞いて息をつく。
聖城を囲む森からは平和な鳥の囀りが聞こえてくる。火照った身体を朝の冷風が撫でていった。
一刹那の沈黙だっただろうか、流石にノーストンさんの前にずっと立っているわけにもいかず、元の場所に戻ろうかと身体を傾けかけたところだった。
静かな空間を破ったのは、ノーストンさんの方だった。
「すみません」
と、突然彼は謝罪した。さっきから彼は自分の事を卑下してばかりだ。
謙遜で謝られたかと思い、ノエルは否定を返そうと心持ち姿勢が前に出た時だった。
「――オレ、実は少し嘘を吐いていました」
「え……?」
ゆくりない告白だった。何を言われているのか解らなくて、今度こそ開いた口が塞がらない。さっきまで熱いくらいだった身体が急に冷え込んで背筋につっと冷たい汗が流れていった気がした。
そんな青ざめた自分を見て、ノーストンさんは周章して「あの、言葉が悪かったですね」と咳払いする。
「日の出を描きに来たというのは本当です。先程話した身の上話も全部……本当のことですよ。でも、あなたの隣にわざわざ座る必要はまあ、当然無かったわけで」
そう言っている間に、彼は二枚目の日の出を大雑把に描き終えていた。また筆を替えて、今度は地上に佇む丘を駆ける小さな四足の獣が現れる。これはだいぶ遠目なので、犬と言われても信じるかもしれない。
彼の弁解を聞いてそういうことかと胸を撫で下ろした。刻下の大方の話が嘘であったなら、人間不信になりそうだ。
そんなノエルの心情を知ってか知らずか、彼は穏健な表情で見上げて話を続ける。
「ヴィクター……元、将軍に、良ければあなたの事を気に掛けてくれないかと言われたんです」
「か、閣下、が?」
彼から到底語られないと思われる人物の名前が出て、多分今の自分は非常に間抜けな顔をしているんじゃないだろうか。慌ててさっきから開きっぱなしになっていた口だけは引き締めておいた。
「彼は優秀な方です。オレの素性も何処かで知ったらしく、頭を下げに……ノエルと同じ事をおっしゃっていましたよ。『俺は戦しか出来ないが、今と未来のために戦場に立っている。アナスンのような悲劇は二度と出さない。どうか、見ていてほしい』と」
それは、疑う余地もなくヴィクター閣下らしい気遣いだった。人の上に立ち、責任を背負い続けていく、その大木のように大きな背中に、ノエルはいつも支えられている。
「そんなヴィクターさんの元につくあなただからこそ、オレがいた国を知っていてほしかった。戦に負けた国の結末を……。戦に関わる者であるからこそです」
試すような事を言ってすみません、と彼は腰をあげて軽く一礼した。頭の動きに合わせて、長い耳が前後に揺れる。
そしてノエルの脇を通り、しばらく投げ出されて放置されていたノエルの本を拾って、差し出した。白くて少し血管の浮き出た二の腕と角ばった手には、乾いた絵の具がついているが、本に付かないよう丁寧に扱ってくれている。
「どうか、ノエル自身が言っていたことを忘れないでください。後悔をしないように。苦しまないように、ね」
「……はい」
本を受け取りながら、ふと自分が伝令兵を志した日の事を思い出す。
少しでも、手に届く範囲だけでも、今を良くしたい。周りの人達を助けたい。……本の中のような幸せな国にしたかったのだ。そして当時の気持ちは、今はもっともっと我儘な願いにまで膨らんでいた。手が届く範囲だけではない、国を変えようとしている方達をノエルは知っている。
だから、自分も希望を捨てずにいられるのだ。彼との会話で、その気持ちをより強く実感した。
ノーストンさんは今描いている絵だけでも仕上げたいと、また筆を取った。二人でまた長椅子に座る。でも今度は、彼の荷物を長椅子の端に寄せて隣り合って座る。かといってあまり寄りすぎると絵を描く邪魔になってしまうため、ノエルは拳三つ分くらい開けて座っている。それでも先程よりは近い位置で、世界が創造されていくのを見られるのは心が浮き立った。
現在進行形で作られている絵本は、孤独な狐が誰かと関わって変わっていくお話。ノエルが羨むくらいに、その光景は眩しい。
「ああ、それと、ヴィクターさんが、ノエルは本が好きだから気が合うだろうって言っていました」
こんなものかな、と独り言ちたその手元には、夜明けの太陽に照らされた雲がぷかぷかと浮かんでいる。
「ノーストン、さんも、よく、本を?」
「ええ、オレもよく読みましたよ、『キモチのカタチ』」
「あ、なんで……!」
「さっき言ってましたよね。自分の気持ちを伝える方法は、どんな形でも構わない」
「う、うぅ……」
自分の勇気の言葉が受け売りだと言うのが、彼にはバレてしまっていたらしい。もっともらしい事を言ってみたけれど、慣れない事をするものじゃないのかもしれない。
思わず背中を丸めて俯いていると、ノーストンさんは穏やかな口調で続けた。
「恥じる事ではありませんよ。やはり空想に人を突き動かす力があると……オレももっと自彊しなければと、励まされましたから」
画板に乗った出来上がったばかりの絵を、充足感に満ちた顔で見つめている。太陽の昇る丘を横目に、小さな獣が助けてくれた人間の元へと走っていく絵だ。少し粗目に色をつけてあるが、却ってそれが現実的な景色と幻想的な世界の合間を縫っているようで、不思議な感覚になる。
その絵を膝の上に乗せたまま、肺の中の空気を入れ替えるように、ノーストンさんは肩で大きく呼吸をした。「えっと……」と気まずげに会話を始める。
「……その、何か、気持ちを沈めてしまったお詫びを、と思うのですが」
思っていなかった要求に、ノエルは思わずたじろいだ。
「お詫びなんて、でも、その、別に、き、気にしてない、ので……」
「気負いしなくても、些細な事でも構いませんので」
「う、うーん……」
と引き下がる様子も無かったため、無下にするのもどうか、と考えていると、
「あ!」
頭の中にずっと幼いころから抱えていた悩みが一つ閃いた。
「そ、その……絵を、教えて、ほしい、です……。手紙、よく、書くので……」
「ええ、お安い御用です!」
すくっとノーストンさんが立ち上がると、くきゅう、と小動物が鳴いたような音が耳元でした。「はは……オレのお腹の虫ですね」と少し気の抜けた声で言った。手に持った画板でとんとんと軽くお腹を小突いた。
「先に朝食に行きましょうか。お時間大丈夫でしたか?」
朝食、というワードを聞いて、急にノエルも空腹である事を意識しだしてしまった。昨夜の夕飯以降何も食べていないので、胃の中はすかすかだ。
「はい、今日は、ヨアキムさんと午後から合流、するので……それまでは、空いてます」
仕事までは一人で読んでいない本を消化しようと思っていたので、予定らしい予定もない。そう返事をすると彼は「良かった」と朗笑しながら、画材をぱたぱたとしまいだした。
「あ、て、手伝います」
「ありがとうございます。ではその絵を持っていただいても構いませんか? 一度、オレの部屋に置きに行きましょう」
「は、はい」
膝に乗せっぱなしにしていた本をショルダーバッグに入れてから、ノーストンさんが一枚目に描いていた狐の絵を折れないように下から両手を潜り込ませて持ち上げると、また狐の横顔と向き合うことになる。栗色の体毛が風に揺れ、埋もれるようにあるくりりとした真っ黒い瞳は、丘の向こうに見える太陽をじっと見据えている。絵の具は乾いてきたので先程よりも艶やかさは減っているが、その分意志の強さをより感じることが出来た。
「っと、お待たせしてすみません」
顔を上げると、この狐と同じように瞳孔の細い瞳が、絵の中の太陽と同じ黄金色を湛えてノエルの事を見つめていた。
その瞳で、彼は多くの出来事を見てきたのだろう。それは余りに凄絶で惨憺で、自分の無力さに絶望せずにはいられない程の事だった。でも彼は険阻な道のりを乗り越えて、ここで人々を笑顔にさせる絵本を描いている。自分が出会う人、その先の人まで笑顔にさせる絵本を。ノエルには、そんな彼自身が物語の登場人物であるかのように映った。
いつか彼の絵本を、スヴェニトラの……戦に疲れてしまった人達に届けるお仕事が出来たら、なんて小さな想いが心の底で疼いた。
「では、行きましょうか」
「あ、はい!」
祖国のために。
幸せな未来のために。
わたしは、この朝焼けを忘れない。
「ノエル、隣良いですか?」
明け方の外廊下にはいつも人がいない。
いや、正確にはこの聖城で朝早くに起きる人自体は結構いる。でも大抵は、中庭に武器を振りに行ったり、体力作りの一貫で走り込みをしていたり、菜園の様子を見ていたり、その風景は目前の広い原っぱの中に見られることが出来た。少し離れた所に座っている自分もその風景の一部なのだろうけれども、風景画にするなら額縁からぎりぎりはみ出るくらいの所にいるのだろうなと思う。
そんな明け方の外廊下自体には人がいない……はずだったのだけれど。
「あ、あの……」
手元の本から視線をあげると、大仰に荷物を持った青年がいた。V字の白いシャツの上から、ダークブラウンのコルセット、トマトレッドのジレを羽織り、ネイビーブルーのパンツ、これまたトマトレッドのブーツと同色の革製の肩掛け鞄……と、落ち着いた配色の服装を細身の身体に着込んでいる。
そんなわけで、どちらかと言うと直視してしまったのは彼の手元の方で、脇には画版と紙の束を抱えバケツを手にし、もう片方の脇には陶器のお皿のような物を挟んでいた。恐らくパレット、というやつだ。何やら細かな柄の入ったカフスボタンが手首で小さな宝石のように輝いている。
「え、えっと……」
「すみません、お邪魔でしたでしょうか」
服装の印象通りの落ち着いた声色で、自分の口が回らない間に彼に――ノーストンさんに謝られてしまった。慌ててノエルは何も悪くないですと首を横に振る。
「邪魔じゃ、ない、です……」
「良かった、静かにしていますので」
そう言うと、彼は同じ長椅子に腰を下ろした。胸元まで伸びる癖のある青紫色の一房に束ねられた髪が、ふわりと後を追いかける。毛先は少し色素が薄く、空に溶けてしまいそうだとノエルは思った。
頭の上にはその髪と同じ色をした、同じくらいの長さの耳が乗っていた。森の民フォレスティアを表す兎のような耳だ。左耳に付いたピアスが、ノエルの角度からちらりと見えて、視線が誘われる。
四人程、頑張れば五人程が座れる長椅子に、ノーストンさん、ノーストンさんの荷物、ノエルと適度な距離を保って並んでいる。手元の本から視線を僅かに外せば、彼の作業は視界に映る。
自分の読んでいる本の続きだって興味深いけれど、なんて少し言い訳がましいことを考えていると、
「オレのことは気にしないでください」
と見透かされたように言われてしまった。
彼の職業は絵本を描くことである。今広げているのは、そのための小道具だ。紙の束だったり、素人目には判らない様々な種類の筆や絵の具の容器等、画材が足元や長椅子に並んでいる。
気にしないでくれと言われてつい頷いて反応してしまったが、昔から本を読むのが好きだったノエルにとっては、興味が出ないはずもない。絵本だって幼い頃から親しみがあるし、この歳になって読むと別の面白さがあることをよく知っている。
悩んだのは寸刻で、手元の本をちまちまと読み進めながら、ノエルはノーストンさんの作業を横目でこっそり眺めることにした。
まずノーストンさんは、シャツの袖を何度か捲って二の腕まで露わにする。それから、足元に置いた肩掛け鞄から青と黒と白の絵の具の入った陶製の容器を開けてパレットに並べる。
彼は平べったい大きな筆を手に取るとほとんど黒に近い瑠璃紺色で紙の上部を塗りたくった。それから少しずつ青色に白を足しながら、下の方へどんどん海を広げていく。そうして白い紙が何段もの青色に染まっていった。そこまで来て、目前の景色から察するにこれは海じゃなくて空なのだろうと思った。
次に刷毛のような筆を手にしたかと思うと、撫でるように紙面の上を飛び回る。ムラのあった空の色が段々と溶け合って、現実に広がっている同じような夜明けが出来ていく。
それからノーストンさんはバケツで筆を洗って、毛先の整った太い筆を取り出した。
左半分に不格好な茶色い線が幾重にも重ねて描かれ、これは樹の幹だろうか。繰り返し筆を動かすと色が乱雑に重なっていき、地面から生えて何十年と経ったかのような風格を感じた。
その樹木の横に何かが形作られる。やがてちょこんと描かれたのは、お座りをしている小さな薄茶の獣の姿のようだった。耳がぴんとしていて、ふわふわの尻尾が確認できる。犬、かな……。
「これは狐ですね」
「あ、きつね……」
横顔をよく見ると瞳孔が縦に長くきりっとしている。若干汚れた毛並みが野性を感じさせており、人懐こい犬とは確かに違う種類のものだ。犬とは違うのに納得が……。……もしかして、声に出ていたのだろうか。
気付けばどうやらノエルの身体が、長椅子から斜め四十五度くらい傾いて、ノーストンさんの方に向いていたらしい。急に恥ずかしくなって慌てて姿勢を正し、本に視線を移す。改めて本を眺めるが、ずいぶんと文字が情報として頭に入っていなかったらしい、自分が覚えていた場面よりも時間軸が飛んでしまっていて、内容が全く頭に入らなかった。加えて、身体の中の血が羞恥という火で沸騰してしまっている感覚も、一向に抜けない。
「良ければ見ますか、ノエ――」
「い、良いんですか……っ!?」
飛んできた彼の声を遮って滑り気味に発声してしまった。
ノーストンさんは驚いて目をぱちくりさせた。自分もそんな事を言うつもりは無かったので、身体の芯から締め付けられたような感覚がして縮こまってしまう。
でも、彼はすぐに黄金色の眼を細めて柔らかく笑った。
「構いませんよ。せっかくなので、何かお話でもしながら」
彼の瞳も描かれている狐と同様に少し瞳孔が細く見た目では鋭い印象を受けるが、物腰から口調まで穏和な人だ。
筆を足元の水の入ったバケツで一度洗って、別の筆を手に取った。男性の手であるから、もちろんノエルのそれよりは角張っていて、幾分か大きく見える。でもその手から紡がれる世界はすぐに握り潰される程に繊細で、そして彼にしか産み出せない美麗なものだ。
「ノエルはスヴェニトラの伝令兵なんですよね。あの雪国の軍事国家の」
話しかけられて軽く頷いたが、彼の視線は手元にある。言葉で返さないと気付いてもらえない、半拍遅れて「は、はい」と返事することになった。
「実はオレ、スヴェニトラに行ったことがあって」
「え、そ、そう……なんですか?」
「はい、オレも北グラスティア出身なんです。国もいくつか回ったことがあります」
その発言にノエルは二点、驚いてしまった。
一つはフォレスティアの民はあまりヒューマンの街にいない。森の民と呼ばれるだけあり、普段は自然の中で暮らす事の多い種族であることだ。『国を回る』フォレスティアは珍しい。そういえば、フォレスティアが統治して王政を敷いている国もあったはず。もしかすると、彼はそこの出なのだろうか。
もう一つは、北グラスティア大陸から現状、南グラスティア大陸との行き来はあまり多くはない。北と南は対立していたり、謀略絡みでお互い利用し合っているような関係であるからだ。
意外な青年の経歴にノエルが目を丸くしているうちに、ノーストンさんはスヴェニトラを訪れた時の話を続けていく。
「山の上から眺めた、一帯に白い雪に染まった風景は、今でも忘れることは出来ません」
「わたしも……、朝起きて、太陽の光が、反射して……綺麗って、思います」
「ええ、息を呑むような景色でした。無数の白が支配した世界……とでも言うのでしょうか、あの景色を表現する言葉を、オレはまだ知りません」
雪国を舞台とした絵本もいつか描きたいんですけどね、とノーストンさんは筆をバケツに入れ、先程よりも幾分にも細い筆を鞄から取り出して、パレットに塗られた黒い絵の具をつける。
「そういえば、宿に泊まった時に雪かきを手伝わされたりしたのも覚えてるんですよね。男手足りないからとか言われて」
「あ……雪、積もると、大変……ですから。家から、出られないことも……あります」
「ええ、その時、雪は綺麗なだけでは無いのだと痛感しました」
年中雪に覆われた土では何も生えないし、そもそも日光が出る日だって多くは無く、気が滅入ってしまう人も多い。山海にも資源がほとんど無いという実情もある。スヴェニトラが厳しい環境にあるのだということは、そこに住むノエルにはうんざりするほど理解している。
「景色だけじゃなくそこに暮らす人々もよく覚えています、宿のおばあさんは雪かきを手伝った後、温かいスープをくださって。そうそう、そこのお孫さんが双子で、元気いっぱいで可愛らしくて」
楽しそうに話す彼の頭の中には、ノエルが慣れ親しんだあの国の風景が浮かんでいるのだろう。馴染み深い服装、建物の様式、そして静かな幸福に笑いあう家族。戦の中であっても、そんな景色だってある。
あまりそういう地元の話をしたことのないノエルには少しこそばゆく感じた。
「好い人ばかりでした。本当の目的なんて忘れてしまうくらいに」
「目的……?」
「……あ、いえ、なんでも」
そこで何か口走ったことに気付いたようで、ノーストンさんは取り繕うように言葉短く続けただけだった。その間にも、絵の中の狐には耳と手と鼻と髭と足されて、紙に現れた何かだった物体に命が創造されていく。狐の横顔は凛々しく、何処かギラついた欲のようなものを湛えていた。
「……」
会話が突如寸断されると、その気まずい空気を埋めるように周囲の音が二人の間を流れていく。夜明けだった時間はとうに過ぎて、照りつける陽光はだいぶ上り、早朝から朝とも言うべき頃合いになっていたせいもあり、起床する者も段々増えているようだ。城からは物音が度々聞こえるが、未だ中庭に出てくる物好きは少ないし、いてもこんな額縁から外れたところにあるような外廊下まで来る者はいない。
何か言わないといけないと頭の中を慌てて引っ掻き回してみたが、中々話題が見つからなかった。元々喋るのが得意でもないので、天気の事とか、昨日の夕飯の話とか、するにしてもそういう話しか浮かばない。そういう話、で良いのだろうか。居心地が良かったはずの長椅子の隅っこは、なんだか軍採用試験の待機時間を思い出すくらい窮屈さを感じた。
「……気にするな、なんて言うと、気になりますよね」
上体を曲げてばしゃばしゃと足元のバケツで筆を洗いながら、ノーストンさんは呟いた。結われた青紫の髪が表情を隠してしまっていて、彼が今どんな表情をしているのかノエルには判らなかった。色素の薄い毛先が、彼の身体の動きに従って不安定に揺れている。
しかしそれも刹那の事で、ノーストンさんは顔を上げ、筆を置いて空いた両手で画板をちょっとだけこちらに傾けた。描きたての絵は明るくなり始めている空の光を反射して、鮮少ではあるが艶やかに輝いている。
「この夜明けの絵……ノエルにはどういう風に見えますか?」
「え? そ、その……」
なんと言ったものか、間違ったことを言ったら怒られたりしないだろうか。
答える事に恐怖が無かったわけではない。でも、彼の真剣な眼差しを見て、ノエルは唾を呑み込んで正直に伝える。
「狐が、何か決心、している……ところ……ですか?」
ノーストンさんは目を見開いて、「……物語の流れや字が無くても本当に当ててもらえると、嬉しいですね」と呟く。
「ええ。孤独な狐が、助けてくれた人間にお礼を言うことを決意をするところ……なんですよね」
なるほど、狐は狡猾で警戒心が強い生き物だと聞いたことがある。となると、人懐こいということも無いのだろう。この場面はそんな自分の殻を破って前に進もうとするシーンなのだ。人付き合いの苦手なノエルは少し羨ましい、とさえ思う。
なんとか質問の答えを当てたことに胸を撫で下ろしていると、彼は絵をノエルとの間に置いて、新しい白紙を画板の上に乗せた。
「オレがこの城に来る前にこの絵本を描いていたとしたら、この狐は助けてくれた人間をズタズタにしていたでしょうね。その本にもオレはこう書いたでしょう、『めでたし、めでたし』と」
「え……?」
淡々と話すノーストンさんの声にぞっとする。今までの彼の穏和な印象からとても紡がれるような内容だとは思えなかった。すぐそこに転がっている狐の絵が忽ちにでも動き出して鋭い爪を剥き出しにして襲い掛かってくる錯覚が見えた気がした。
ノエルの目の前で彼はまた筆を取り、毛先に絵の具を付ける。その筆が一回、二回と紙上を泳ぐと、瑠璃紺の空が広がっていく。世界が造られる様は神秘的で、視線が吸い寄せられてしまう――たった今の会話の内容を一時でも忘れてしまいそうになる程に。
絶句するノエルを、ノーストンさんは一瞥する。
「オレは、恐ろしい話しか描けなくなっていたんです」ノーストンさんは平面な空へ、希薄な声で喋っていた。「オレのいた国は、小さかったけれど良い国でした。でも戦に巻き込まれて、戦況もどんどんと悪くなって……オレも最初は希望を持って絵本を描いていました。でも、どれだけ物語の中で希望を望んでも、現実は何も変わらなかった。……そして、そのまま国は滅びていきました」
滅びた。その単語を聞いて、ノエルの脳内にいくつかの国を想起させた。どの国の事かは判らない。だが、次の一言でそのいくつかの国から、明確に浮き出てきた国があった。
「ノエルの国を……悪く言うつもりはないんです」
そう華奢に笑ったのを見て、何かがすとんと落ちた。
きっと彼の中では昇華されているであろう感情は、それでも未だに奥底に渦巻いているのだろう。特に、自分のような人間を見た時は。
「すみません、朝からこんな話をするつもりでは……困りますよね」
彼は、自嘲する。眉を下げて、力無い声が冷たい朝の風に浚われていく。その顔を直視するには痛々しくて、ノエルの身体の奥に針が刺されるような痛みが走った。
「そんなこと……っ!」
間髪入れず自分の背中から説明できないエネルギーが働いて、勢い余って長椅子から腰をあげていた。膝に乗せていた本が軽い音を立てて石畳の上に落ちる。
「の、ノーストン、さん、はっ……!」
立った勢い任せに喋ろうとするものの声帯が上手く震わず、ぱくぱくと口が動くだけ。正確に……正確に伝えなきゃいけないと思うと、便宜良い陳述が出てこない。
(でも……伝えなきゃ……!)
話を聞いていて、思ったことがある。
彼はうんと真面目で慎ましい人だ。話しぶりも丁寧で、自分みたいな口下手な人間にも気後れしないで話してくれて……スヴェニトラの話も、自分のために合わせて話してくれたのだろう。
遺恨が無いはずはない。過去の戦禍を今でも奥底に抱えてしまっているけど、そんなもの一切出さずに彼は会話しようとしてくれていたのだ。
そんな人だからこそ、きっと。
ノエルは懐からいつも持ち歩いている紙と鉛筆を手に取った。鉛筆を、滑らせていく。
「ノエル……?」
座っているノーストンさんの元へ歩を進めた。自分の五体が太陽光を人の形に受け止めて影を作り、ノーストンさんに覆い被さる。
『ノーストンさんは、苦しかったんですよね』
そう書いた紙を、ノーストンさんの顔面に突きつける。唐突なノエルからの発信に、彼は目を見張った。
答えを待たずに、また紙を捲って文字を書き込んでいく。
『自分の抱えていた気持ちに、後悔に、ずっと向き合い続けて、苦しかったんですよね』
彼は気まずげに顔を逸らした。緩やかにカーブする青紫の髪が追随して揺れ動く。
「……そんな、立派なものじゃありません」言下、眉を寄せる。「後悔と現実を受け止められる程、オレは強くはなかった。苦しさは自分ではどうにもならなくて、吐き場所を探しに行ったんです……最低な奴ですよ、オレは」最後には、自虐の笑みすら浮かべて。
そこまで聞いて理解した。ああ、確かに一緒だと。彼がスヴェニトラで出会った人に対して、好い人達だったと感じた。その感覚を、ノエルは彼に対しても感じていた。
多分、それは共感だ。
ノエルは今、ノーストンさんに共感している。
気持ちが解るなんておこがましい事は言えない。でも、育ちも考えも違う人であっても、言葉を交わし笑い合う事が出来る。時には解り合えず怒って対立してしまうこともある。でも反省して仲直りだってすることも出来る――お互いが相手のことを想う事が出来る。そういった感情のやり取りは何処にいても変わらない。
それは、国境を越えて手紙を届けることもあるノエルが、よく知っている感情だ。
「ノーストン、さんは……最低じゃないです。だったら、何で今、絵本を、描いてるんですか……? 悲劇、じゃない……ハッピーエンドの、お話……」
「……どうしてだと、思いますか?」
彼は問い返してくる。狐の毛と同じ色を持った瞳孔の細い瞳が、表情を消して真っ直ぐノエルを見上げてくる。さっきの話にあった人間をズタズタにするという狐の話が一瞬でも脳裏をよぎるが、そんな物騒さは感じなかった。どちらかというと、ヘレン(ヨアキムさんが飼っているわんちゃんで、ノエルの腰くらいの大型の犬だ)に餌を懇願されている時のような、自分の手元に無いものを本能で求めているような、そんな視線だった。
先程の彼の答えは、確かにノエルの中にある。微意なものではあるが、彼はそれを求めている。
「自分の、気持ちを……伝える方法……は、どんな形でも、構わないから……」
意を決してノエルは視線を投げ返す。
「自分に、出来る、こと……わたしも軍で、伝令を、精一杯やって、ます。ノーストンさんも、今を、未来を、良く、したかった……そうだった……ですよね?」
最初は彼の近くにいた子供達の笑顔のために、空想の世界を描いてきたのだろう。
物語の中で希望を抱いていたのなら。解り合える事を描いていたのなら。
「現実は、悪いことだけじゃ、ありません……それを、あなたは、知っているから」
一気に思っていた事を吐き出したせいで、心臓が走り終えた時のようにどくどくと鳴って血液を体中に流しているのを感じた。無意識に握り込んだ小さな紙束に皺が寄る。
「……そう、ですね」
ノーストンさんが空を仰ぐ。千切れた雲が無数の色彩を生み出している空へ向いているその瞳は、絵の中の狐みたいに小さな決意の炎のようなものを含んでいた。
「あなたの気持ちが、聞けて良かった」
もたげた頭を戻してぽつりとそう言った。ノエルもそれを聞いて息をつく。
聖城を囲む森からは平和な鳥の囀りが聞こえてくる。火照った身体を朝の冷風が撫でていった。
一刹那の沈黙だっただろうか、流石にノーストンさんの前にずっと立っているわけにもいかず、元の場所に戻ろうかと身体を傾けかけたところだった。
静かな空間を破ったのは、ノーストンさんの方だった。
「すみません」
と、突然彼は謝罪した。さっきから彼は自分の事を卑下してばかりだ。
謙遜で謝られたかと思い、ノエルは否定を返そうと心持ち姿勢が前に出た時だった。
「――オレ、実は少し嘘を吐いていました」
「え……?」
ゆくりない告白だった。何を言われているのか解らなくて、今度こそ開いた口が塞がらない。さっきまで熱いくらいだった身体が急に冷え込んで背筋につっと冷たい汗が流れていった気がした。
そんな青ざめた自分を見て、ノーストンさんは周章して「あの、言葉が悪かったですね」と咳払いする。
「日の出を描きに来たというのは本当です。先程話した身の上話も全部……本当のことですよ。でも、あなたの隣にわざわざ座る必要はまあ、当然無かったわけで」
そう言っている間に、彼は二枚目の日の出を大雑把に描き終えていた。また筆を替えて、今度は地上に佇む丘を駆ける小さな四足の獣が現れる。これはだいぶ遠目なので、犬と言われても信じるかもしれない。
彼の弁解を聞いてそういうことかと胸を撫で下ろした。刻下の大方の話が嘘であったなら、人間不信になりそうだ。
そんなノエルの心情を知ってか知らずか、彼は穏健な表情で見上げて話を続ける。
「ヴィクター……元、将軍に、良ければあなたの事を気に掛けてくれないかと言われたんです」
「か、閣下、が?」
彼から到底語られないと思われる人物の名前が出て、多分今の自分は非常に間抜けな顔をしているんじゃないだろうか。慌ててさっきから開きっぱなしになっていた口だけは引き締めておいた。
「彼は優秀な方です。オレの素性も何処かで知ったらしく、頭を下げに……ノエルと同じ事をおっしゃっていましたよ。『俺は戦しか出来ないが、今と未来のために戦場に立っている。アナスンのような悲劇は二度と出さない。どうか、見ていてほしい』と」
それは、疑う余地もなくヴィクター閣下らしい気遣いだった。人の上に立ち、責任を背負い続けていく、その大木のように大きな背中に、ノエルはいつも支えられている。
「そんなヴィクターさんの元につくあなただからこそ、オレがいた国を知っていてほしかった。戦に負けた国の結末を……。戦に関わる者であるからこそです」
試すような事を言ってすみません、と彼は腰をあげて軽く一礼した。頭の動きに合わせて、長い耳が前後に揺れる。
そしてノエルの脇を通り、しばらく投げ出されて放置されていたノエルの本を拾って、差し出した。白くて少し血管の浮き出た二の腕と角ばった手には、乾いた絵の具がついているが、本に付かないよう丁寧に扱ってくれている。
「どうか、ノエル自身が言っていたことを忘れないでください。後悔をしないように。苦しまないように、ね」
「……はい」
本を受け取りながら、ふと自分が伝令兵を志した日の事を思い出す。
少しでも、手に届く範囲だけでも、今を良くしたい。周りの人達を助けたい。……本の中のような幸せな国にしたかったのだ。そして当時の気持ちは、今はもっともっと我儘な願いにまで膨らんでいた。手が届く範囲だけではない、国を変えようとしている方達をノエルは知っている。
だから、自分も希望を捨てずにいられるのだ。彼との会話で、その気持ちをより強く実感した。
ノーストンさんは今描いている絵だけでも仕上げたいと、また筆を取った。二人でまた長椅子に座る。でも今度は、彼の荷物を長椅子の端に寄せて隣り合って座る。かといってあまり寄りすぎると絵を描く邪魔になってしまうため、ノエルは拳三つ分くらい開けて座っている。それでも先程よりは近い位置で、世界が創造されていくのを見られるのは心が浮き立った。
現在進行形で作られている絵本は、孤独な狐が誰かと関わって変わっていくお話。ノエルが羨むくらいに、その光景は眩しい。
「ああ、それと、ヴィクターさんが、ノエルは本が好きだから気が合うだろうって言っていました」
こんなものかな、と独り言ちたその手元には、夜明けの太陽に照らされた雲がぷかぷかと浮かんでいる。
「ノーストン、さんも、よく、本を?」
「ええ、オレもよく読みましたよ、『キモチのカタチ』」
「あ、なんで……!」
「さっき言ってましたよね。自分の気持ちを伝える方法は、どんな形でも構わない」
「う、うぅ……」
自分の勇気の言葉が受け売りだと言うのが、彼にはバレてしまっていたらしい。もっともらしい事を言ってみたけれど、慣れない事をするものじゃないのかもしれない。
思わず背中を丸めて俯いていると、ノーストンさんは穏やかな口調で続けた。
「恥じる事ではありませんよ。やはり空想に人を突き動かす力があると……オレももっと自彊しなければと、励まされましたから」
画板に乗った出来上がったばかりの絵を、充足感に満ちた顔で見つめている。太陽の昇る丘を横目に、小さな獣が助けてくれた人間の元へと走っていく絵だ。少し粗目に色をつけてあるが、却ってそれが現実的な景色と幻想的な世界の合間を縫っているようで、不思議な感覚になる。
その絵を膝の上に乗せたまま、肺の中の空気を入れ替えるように、ノーストンさんは肩で大きく呼吸をした。「えっと……」と気まずげに会話を始める。
「……その、何か、気持ちを沈めてしまったお詫びを、と思うのですが」
思っていなかった要求に、ノエルは思わずたじろいだ。
「お詫びなんて、でも、その、別に、き、気にしてない、ので……」
「気負いしなくても、些細な事でも構いませんので」
「う、うーん……」
と引き下がる様子も無かったため、無下にするのもどうか、と考えていると、
「あ!」
頭の中にずっと幼いころから抱えていた悩みが一つ閃いた。
「そ、その……絵を、教えて、ほしい、です……。手紙、よく、書くので……」
「ええ、お安い御用です!」
すくっとノーストンさんが立ち上がると、くきゅう、と小動物が鳴いたような音が耳元でした。「はは……オレのお腹の虫ですね」と少し気の抜けた声で言った。手に持った画板でとんとんと軽くお腹を小突いた。
「先に朝食に行きましょうか。お時間大丈夫でしたか?」
朝食、というワードを聞いて、急にノエルも空腹である事を意識しだしてしまった。昨夜の夕飯以降何も食べていないので、胃の中はすかすかだ。
「はい、今日は、ヨアキムさんと午後から合流、するので……それまでは、空いてます」
仕事までは一人で読んでいない本を消化しようと思っていたので、予定らしい予定もない。そう返事をすると彼は「良かった」と朗笑しながら、画材をぱたぱたとしまいだした。
「あ、て、手伝います」
「ありがとうございます。ではその絵を持っていただいても構いませんか? 一度、オレの部屋に置きに行きましょう」
「は、はい」
膝に乗せっぱなしにしていた本をショルダーバッグに入れてから、ノーストンさんが一枚目に描いていた狐の絵を折れないように下から両手を潜り込ませて持ち上げると、また狐の横顔と向き合うことになる。栗色の体毛が風に揺れ、埋もれるようにあるくりりとした真っ黒い瞳は、丘の向こうに見える太陽をじっと見据えている。絵の具は乾いてきたので先程よりも艶やかさは減っているが、その分意志の強さをより感じることが出来た。
「っと、お待たせしてすみません」
顔を上げると、この狐と同じように瞳孔の細い瞳が、絵の中の太陽と同じ黄金色を湛えてノエルの事を見つめていた。
その瞳で、彼は多くの出来事を見てきたのだろう。それは余りに凄絶で惨憺で、自分の無力さに絶望せずにはいられない程の事だった。でも彼は険阻な道のりを乗り越えて、ここで人々を笑顔にさせる絵本を描いている。自分が出会う人、その先の人まで笑顔にさせる絵本を。ノエルには、そんな彼自身が物語の登場人物であるかのように映った。
いつか彼の絵本を、スヴェニトラの……戦に疲れてしまった人達に届けるお仕事が出来たら、なんて小さな想いが心の底で疼いた。
「では、行きましょうか」
「あ、はい!」
祖国のために。
幸せな未来のために。
わたしは、この朝焼けを忘れない。
ここから言い訳エリア
・杖ノエル持ってないのでエピソード知らなかったので海外wikiから翻訳して内容だけ理解した……(おたおた)
・絵描きでは無いので、なんか色々と間違えてたらごめんね……なんかリアルと違ったらマナのせいってことにしといて
・ノーストンが暮らしていたアナスン公国は「周辺の戦争に巻き込まれた」というだけで、スヴェニトラとの関係性は全くこれっぽっちも明言されていませんが、妄想で勝手にくっつけましたすまん
・ノエルが伝令兵を目指した理由は若干捏造してます
・ノがいっぱいだね……何しろキャラスト一覧でこの二人並んでるからね……
※ここまで言い訳エリア
ソフィとスオウの小説で調子に乗って、また短いの書きたいなと思ったら段々長く&暗くなっていきました(挨拶)。
ノーストンが書きたかったのだけど、なんか良いコンビないかしら~と眺めていると、「杖ノエルの背後の閣下の絵を一緒に描く図」という式が完成したのでした。でもこれゆるがりあネタじゃ……って気付いたのはその後です。てかその話半分くらい消えてない?
ノーストンは実装当時はなんとも思わなかったんですが、デッドエンドアイランド&水着キャラストでちょっと気になりだし(でも当時育てた理由はスキル面白そう&LEX便利じゃん!っていうだけだった。実際に便利ですうん)、急に今年の1月1日に通常ノーストンまで育てだしてごうごうと火がつきました。なんだこの時間差は。この空いてる時間の間に自分の足元に油を撒いていたようです。あの時フェスラキシ先に引けなくて良かったさね……良かったのか……?
最近は毎日デドエン島を病的なくらいに聞いてます。
小ネタですが、通常と水着では演技違ったりするんですよね。ちょっとしか台詞ない上に時間が離れちゃうソシャゲあるあるだと思うけど。
水着の方がテンポゆっくりめで喋ってます。てか全体的にデドエン島は会話テンポ遅めな気がする。シノアも声違う。
ノエルは真マキュ超級の頃から非常にお世話になっております。何度ダッシュ攻撃で泡から出て死んだか……。
杖ノエルが来た時にも本当に引きたかったけど、その前にガチャ死×3を経験していたので……。
後、声があけちゃんなのには、ちょっと運命感じたよね。ファルコムゲーマーなので。
これを機に北グラスティアキャラのストーリーを全部読み直しました。ユリウスと杖ノエルはいないので、海外wikiから翻訳して根気で理解。これ書いてる間に銃ヨアキムが来たのは天恵か……。
実は仮タイトルは中身を書くよりも早く決まったくらいで「私とノーストンさん」というものでした。ずっとこれで行くつもりだったのだけど、作品がほぼ完成形になったところで変えようと思いたったのです。案の定変えようと思い立ってから思いつくまでは数日かかりました。
後更なる小ネタ。
鉛筆あるの?と思われた人も多いと思います。
鉛筆、実際ドラガリでは確認していませんが、現実では1560年代からあった様子。ドラガリ界にあってもおかしくない……かもしれない。
ただ、見た目は今みたいなものではなく、黒鉛の塊そのままとかだったらしい。
作中の筆記の描写は羽ペンしかないんだけど、乾くとアウトなインクってあんま持ち歩くの向かないし、よく走ったり物を書くことのあるノエルは大変そう。
万年筆は1810年とかなので、産業革命真っ只中なんだよね。銃だって過去の物しかないし、ちょっとイメージ違うなーって思うやん?でもゆるがり101話の羽ペン見てると……インクをマナの力で入れてるんですかね?マナ便利ですね。
※せっかく調べたので、羽ペンのある描写を纏めてみたなの
でももちろんこれだけの為に全てのやゆるがりあを読むなんて気にはなれなかったなの。全体的にそれっぽいところ、しか見てないから他にあったら教えてほしいなの。
@杖ノエル【キャラ】 背景の机の上に置いてある
@フルル【キャラ】 鞄の中にそれっぽいのが入っている
@天才の閃き【護符・ライズ前】 エゼリットが持っている
@森の奥に潜むもの【護符・ライズ前】 ラキシが持っている
@夢に見た学校生活♪【護符・ライズ後】 背景の教壇に置いてある
@絵本作家ノーストン【ゆるがりあ・101話】 ノーストンが持っている
@シェスの手紙【ゆるがりあ・286話】 シェスが持っている
@伝令兵ノエル【ゆるがりあ・146話】 ノエルが持っている
@キル姉さんの部下・ヨアキム【ゆるがりあ・197話】 キルスティが持っている
@気になるノーストン【ゆるがりあ・271話】 ノーストンが持っている
@(But with imagination, paint, and quill, I can craft my picture books.) 【キャラスト・夏ノーストン5(英語のみ)】
翻訳すると「(でも、想像力、絵の具、そして羽ペンがあれば、自分は絵本を描くことが出来る)」。「quill」が羽ペンという意味。日本語では「(空想の力と筆で、絵本を描くことはできるから)」という台詞です。
おまけ
@メリィベル学校に行く【ゆるがりあ・108話】 思いっきり現代の鉛筆が転がってるの。気のせいなの。何かの間違いなの。
まだまだ別にドラガリの小説も書いてたりとか書いてないとか。
でもちょっと長めの予定してるので、また小話挟むかも。……と前回と同じことを言っております。
多分3周年に出来たらすごいなって思います(?)。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
拍手やコメントなどいただけますと嬉しくて飛び跳ねます。
☆こちらもよろしくお願いします
cry sky cring(ユーディルとゼシアの短めなお話)
小さな小さな夜の華(スオウとソフィのちょっと真面目なお話)
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HN:ヴィオHP:性別:非公開自己紹介:・色々なジャンルのゲームを触る自称ゲーマー
・どんなゲームでも大体腕前は中の下~上の下辺りに生息
・小説(ゲームの二次創作)書いたり、ゲーム内の台詞まとめたり
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・SFC GC(GBAプレイ可) Wii WiiU NSw NSwlite PS2 PS3 PS4 PS5
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