ポケ迷宮。
ネッツの端っこにあるヴィオののんびり日記的な旧時代的個人ブログ。大体気に入ったゲームについて語ってます。
オクトラ2小説12作目。
キャスティとヒカリのカップリング(ヒカキャス)要素そこそこな、かなり短めなお話です。
1,600字程度となってます。
それでは「夕照」です、どうぞ。
キャスティとヒカリのカップリング(ヒカキャス)要素そこそこな、かなり短めなお話です。
1,600字程度となってます。
それでは「夕照」です、どうぞ。
夕照
彼が宿の部屋の扉を叩き、
「キャスティ、ついてきてくれ」
なんて積極的な姿勢を見せることは今までそうそう無かったので、キャスティは彼の勢いに釣られる形で手を引かれて街の中を歩いていた。
昼間には地上や水面を一様に白く照らしていた太陽は、既に西の山へと沈み始めている。漁師町であるこの街の朝は早いためか、既に眠りに入る用意を始めている者も見受けられた。その一方で、遠海から帰ってきたらしい漁師達が、今宵の宴はこれからだと言わんばかりに肩を組んで酒場に向かっている。
自分の記憶の始まりから地続きにある街並みを、潮風が通り抜けていく。その風に服の裾を煽られながら、やがて教会前に辿り着いた。
教会の入口へと通ずる階段の手前でようやく足を止めたヒカリは、安堵の息を吐いた。歩幅の違いに気遣って歩いてくれているのは伝わったが、それでも自分の鼓動は早く脈打っていた。
「もう、そんなに慌てなくたって」
「時間が、あまりないと聞いたのでな」
「時間って何の……きゃっ」
キャスティが問いかけた瞬間、不意に二人の頭上を影が横切っていった。突然の出来事に身を竦めてしまい、まだ繋いだままのヒカリの手を強く握りしめてしまう。
一方でヒカリの方はというと、周知であるとばかり、驚くどころか楽しげに頭上を仰ぎ見ている。
「キャスティ、俺が見せたかった者達だ」
仰々しく言い、ヒカリはある一点を指差した。その先には白帆が張られた船が何隻かが係船柱に繋ぎ止められて穏やかな波に揺られている。その上空を同じく純白の羽根を広げた十数羽の鳥が弧を描くように舞っていた。キャスティが両手を広げてようやく相違ないだろうと思われる大きな海鳥が、山から差し込む西日を受け止めて、その身を鮮やかな橙色に染め上げている。
「まぁ、素敵……」
「あの鳥は丁度今の時期、この時間帯に東大陸に向かって大海を渡り始めるらしい。数日かけてあの翼だけで東のブライトランドまで渡り、その間休むこともないそうだ」
巨大な雄々しい翼を展開させて、今まさにこの地を旅立とうとしている鳥の背を、キャスティは見つめた。
「東大陸に……」
ブライトランド地方の名を聞いて、キャスティは感慨深く反芻する。記憶に新しいその地方の風景もまた、今と同じ夕陽で染め上げられ、海の上は無数の明かりが灯ったように煌めいている。
「ああ、この西大陸から東大陸にだ。俺は感動したのだ。未知がこの世界には多くある。砂漠の海を見つめていただけでは得ることの出来なかったことが見えてくる」ヒカリは熱っぽく、嬉々としながら続けた。「例えばあの渡り鳥とやらは海の上で何日も食事を必要としないらしいのだ。海を渡ろうと尽力しているにも関わらずだ。得ている水や食糧が特殊なのかもしれぬし、もしくは蓄えている手段が特殊なのかもしれぬ。その謎が解明できれば、ヒノエウマの水不足や食糧難の解決への一助になるかもしれない。そうしたら……」
いつもよりも上ずった声で話す彼の声が、半端なところで途切れた。仰いでいた顔がこちらに向くと、夕空に照らされてなのか、それとも無邪気な反応を示した気恥ずかしさからなのか、いつもの彼よりも頬が紅潮しているように見えた。
「……すまない、俺ばかり話してしまっているな」
いつも冷静な彼が、こうした衝動的な行動を起こすのは珍しい。きっとキャスティが海の向こうで思い出した記憶を背負い込んでいる様子を見て、少しでも元気付けてくれているのだろう。
「ふふ、私だって珍しい薬草を見つけた時は同じようなものよ。ヒカリ君もよく知ってるでしょう」
キャスティが笑い掛けると、彼も戸惑っていた表情を和らげて微笑んだ。
空を見上げると、斜陽を受け止めていた鳥の背中が先程よりも遠くなっていた。
空が凛とした闇に染まるその前の一時、昼日中に広がっている水色を包み込んでくれる色。
自分にとってかけがえのない人が、かけがえのない優しさを与えてくれた暖かな色。
潮騒に紛れて訪れた旅立ちの時を、二人でただ無事を祈りながら眺めていた。
彼が宿の部屋の扉を叩き、
「キャスティ、ついてきてくれ」
なんて積極的な姿勢を見せることは今までそうそう無かったので、キャスティは彼の勢いに釣られる形で手を引かれて街の中を歩いていた。
昼間には地上や水面を一様に白く照らしていた太陽は、既に西の山へと沈み始めている。漁師町であるこの街の朝は早いためか、既に眠りに入る用意を始めている者も見受けられた。その一方で、遠海から帰ってきたらしい漁師達が、今宵の宴はこれからだと言わんばかりに肩を組んで酒場に向かっている。
自分の記憶の始まりから地続きにある街並みを、潮風が通り抜けていく。その風に服の裾を煽られながら、やがて教会前に辿り着いた。
教会の入口へと通ずる階段の手前でようやく足を止めたヒカリは、安堵の息を吐いた。歩幅の違いに気遣って歩いてくれているのは伝わったが、それでも自分の鼓動は早く脈打っていた。
「もう、そんなに慌てなくたって」
「時間が、あまりないと聞いたのでな」
「時間って何の……きゃっ」
キャスティが問いかけた瞬間、不意に二人の頭上を影が横切っていった。突然の出来事に身を竦めてしまい、まだ繋いだままのヒカリの手を強く握りしめてしまう。
一方でヒカリの方はというと、周知であるとばかり、驚くどころか楽しげに頭上を仰ぎ見ている。
「キャスティ、俺が見せたかった者達だ」
仰々しく言い、ヒカリはある一点を指差した。その先には白帆が張られた船が何隻かが係船柱に繋ぎ止められて穏やかな波に揺られている。その上空を同じく純白の羽根を広げた十数羽の鳥が弧を描くように舞っていた。キャスティが両手を広げてようやく相違ないだろうと思われる大きな海鳥が、山から差し込む西日を受け止めて、その身を鮮やかな橙色に染め上げている。
「まぁ、素敵……」
「あの鳥は丁度今の時期、この時間帯に東大陸に向かって大海を渡り始めるらしい。数日かけてあの翼だけで東のブライトランドまで渡り、その間休むこともないそうだ」
巨大な雄々しい翼を展開させて、今まさにこの地を旅立とうとしている鳥の背を、キャスティは見つめた。
「東大陸に……」
ブライトランド地方の名を聞いて、キャスティは感慨深く反芻する。記憶に新しいその地方の風景もまた、今と同じ夕陽で染め上げられ、海の上は無数の明かりが灯ったように煌めいている。
「ああ、この西大陸から東大陸にだ。俺は感動したのだ。未知がこの世界には多くある。砂漠の海を見つめていただけでは得ることの出来なかったことが見えてくる」ヒカリは熱っぽく、嬉々としながら続けた。「例えばあの渡り鳥とやらは海の上で何日も食事を必要としないらしいのだ。海を渡ろうと尽力しているにも関わらずだ。得ている水や食糧が特殊なのかもしれぬし、もしくは蓄えている手段が特殊なのかもしれぬ。その謎が解明できれば、ヒノエウマの水不足や食糧難の解決への一助になるかもしれない。そうしたら……」
いつもよりも上ずった声で話す彼の声が、半端なところで途切れた。仰いでいた顔がこちらに向くと、夕空に照らされてなのか、それとも無邪気な反応を示した気恥ずかしさからなのか、いつもの彼よりも頬が紅潮しているように見えた。
「……すまない、俺ばかり話してしまっているな」
いつも冷静な彼が、こうした衝動的な行動を起こすのは珍しい。きっとキャスティが海の向こうで思い出した記憶を背負い込んでいる様子を見て、少しでも元気付けてくれているのだろう。
「ふふ、私だって珍しい薬草を見つけた時は同じようなものよ。ヒカリ君もよく知ってるでしょう」
キャスティが笑い掛けると、彼も戸惑っていた表情を和らげて微笑んだ。
空を見上げると、斜陽を受け止めていた鳥の背中が先程よりも遠くなっていた。
空が凛とした闇に染まるその前の一時、昼日中に広がっている水色を包み込んでくれる色。
自分にとってかけがえのない人が、かけがえのない優しさを与えてくれた暖かな色。
潮騒に紛れて訪れた旅立ちの時を、二人でただ無事を祈りながら眺めていた。
※ここから言い訳エリア
・たんぺん を さっさと かける にんげん に なりたい
※ここまで言い訳エリア
踊子キャスティ、実装おめでとう!!!(挨拶)
去年の正月の通常ヒカリ&キャスティの実装、そして今年の正月の祈祷師ヒカリでは直近でヒカキャスを書いていたのですが、何も弾が無い時に唐突に踊子キャスティが殴り込んできました。
いや厳密には書いてたのあるんですが別の作品の記念日のために今はそっち書いててごにょごにょごにょ。
今までも書いたら結構いい感じに5人引けてきたので、今回ももう捧げるしかねえよ!と筆が進むままに書きました。
例によってお題メーカーにお題を投げつけてもらいました。お題は「唐突に海に行こうと言い出すヒカキャスの話」でございました。
最近ヒカリ視点が多かったので、キャスティ視点です。たまには積極的なヒカリ君をお届けできたでしょうか。この二人の歳の差を改めて噛み締めた次第でございます。
しかし、お陰様で170連で天井も含めて4人の踊子キャスティが集まりました。
ありがとうございました。書いたら出るは今のところ都市伝説ではなく既成事実になってます。でも多分DQ3コラボがそこそこ爆死してたので乱数調整されたんだと思います。
いやそうじゃない
そうじゃないヒカリ君 pic.twitter.com/tAtXzDInNF
— ヴィオ (@chiika_kirby) May 9, 2025
なんでそういうことするの(色んな意味で)。
キャスティより先に来たのは、多分待ちきれなかったんでしょうね、ええ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
もしよろしければ拍手やコメントなどいただけると嬉しくて飛び跳ねます。
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HN:ヴィオHP:性別:非公開自己紹介:・色々なジャンルのゲームを触る自称ゲーマー
・どんなゲームでも大体腕前は中の下~上の下辺りに生息
・小説(ゲームの二次創作)書いたり、ゲーム内の台詞まとめたり
【所持ゲーム機】
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