ポケ迷宮。

ネッツの端っこにあるヴィオののんびり日記的な旧時代的個人ブログ。大体気に入ったゲームについて語ってます。

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オクトラ2小説4作目。

 とても短く、2.2千字程度のお話。
 ソローネメインの、淡いピルソロです。

 ソローネ1章までのネタバレがあります。

 それでは「碧海に漂う、始まりの航路」です、どうぞ。




碧海に漂う、始まりの航路


「海……」
 意味もなく、目前の風景そのままの言葉が漏れていた。
 眩い程の太陽に照らされて無限に煌めいている白と青だけの景色に、ソローネはただただ圧倒されていた。何処から香るのか、風に乗って届くにおいは独特で、鼻の奥を刺激されるような、今までソローネが感じたことのないものだった。
『海って知ってるか、ソローネ。地面をずっと歩いていくと果てがあって、その先にとにかくでけえ水溜まりが広がってるんだとよ』
 何処で聞きかじってきたのか、昔馴染みが楽しそうにそんな事を言っていたことがある。ニューデルスタで降った雨が作る水溜まりなんてものは、薄汚れたゴミを浮かべて、映る景色はすぐそこに建ってる建物ばかりで空なんてとにかく遠かった。
(全然違うじゃん……)
 まばらに散る白い雲が貼りついている青空の下で広がる海は何も映しておらず、空に輝く太陽の白い光を幾重にも反射させている。
 窮屈な籠の中を映していたものとは違って、果てが無い――
「ソローネ、こんなところにいたか」
「……ヒカリ」突然後ろから声を掛けられ殺気立った声色で返した。「背後に気配を消して立たないで」
「す、すまない」
 特に意識していたわけではないのだろう、同い年程度の好青年は躊躇なく謝り、ソローネの隣に並ぶ。
「風が心地よいな」
「うん」
 僅かな沈黙の間も船体が波を掻き分け、甲板の鈍い揺れが足元から伝わってくる。これまで地上にしか立ったことのなかったソローネは船酔いというものがあるのを初めて知った。事前に仲間の薬師に薬を受け取っていなければ、今頃寝込んでいた可能性もあるのかもしれない。
「海って……本当に広いんだね」
「海は初めてか」
「……街を出たことって殆どなかったから」
「そうか。俺も旅に出るまで国を出たことはなくてな。二回目にもなると見慣れるものかと思ったが、やはり圧巻だ。俺の故郷は砂漠で、細かい砂を風が打って波を作る。陸の海、とは言い得ていると思ったものだ」
 自分の故郷をそうやって語れるなんて、羨ましい。
「へえ、面白そう。ヒカリの国も見てみたいな」
 そう言うと、ヒカリはきりっと結んだ唇に微かな笑いを乗せた。
「俺も皆にク国を紹介したい。そのために、やれることをやらねばな」
「……そうだね」
 やれること。今の自分にとってのそれは、子供の頃からいた組織の親を手にかけるという血生臭い話だ。
 そう考えて、どうしても旅の始まりを思い出してしまう。自由が欲しい、そう思ったきっかけを。
 もしピルロと共に街を出て今この隣にいたのなら、この海を見てなんて言っただろう。その日その日を生きてきた彼は、見渡す限り爽やかな景色に不安な気持ちを抱くのかもしれない。それとも中性的な顔でくしゃりと子供っぽく笑って興奮したりするのかも。でもその場合は恥ずかしがって顔を逸らしたり煙草を吸ったりして誤魔化すのかもしれないけど。
「……ソローネ」突如、温度を下げた声に呼ばれ、意識は青い景色から赤い装束へと向けられる。「死者に祈りを捧げるのは、全てを為してからだ」
 思わず目を見開いて隣に立った青年を見る。琥珀色の瞳がこちらのことを見透かすように真っ直ぐ見つめていて、ソローネは即座に顔を逸らして海の方を向いて素っ気なく言った。
「別に、祈ってないよ」
「……そうか」
「どうしてそう思ったの?」
「俺が亡き友たちのことを考えている時に似ていたのでな」昔馴染みとはまた違った整った顔立ちを海に向け、眼を細めた。「よく今のように友に釘を刺されたものだ」
 目前の大海原のように穏やかに言う様は、確かに王子様という高貴な暮らしをしてきた人の顔だな、なんて考えた。でもその話す内容は、戦が日常茶飯事だった国の、という言葉が接頭辞のように当たり前に存在している。内容は違えど、多くの人間の死を見てきた者の言葉だ。
 しんみりとした空気を払うように、それはともかく、とヒカリは話題を変えた。
「ソローネのことをキャスティが呼んでいた」
 人一倍気配りの上手な女性のたおやかな笑顔が頭の中で浮かぶ。確かに彼女には甲板に行ってくるとは伝えてはいた。
「……? なんだろ」
「昼飯だ」
「……ああ」頭の中に全く存在していなかった単語の意味を理解するのに数秒かかった。「そっか」
 ヒカリはこちらの動揺には気付かないまま、真っ赤な外套を翻し、
「オーシュットが待ち侘びて今にも食い付きそうだった。キャスティが止めているがあれでは時間の問題だ」
「フフ、獣人って面白いね」
 先程浮かべた女性の横で、頬を膨らませて待てをする犬のような耳を持った少女を想像して笑う。獣の耳と尻尾を持った体格が一回り小さな少女も、気付けば今のソローネの旅の仲間である。
 ヒカリの後を追いかけようとして、再度一面に広がる空と海を振り返る。何もかも吸い込んでしまいそうな眼前の景色に対して祈ってはいない、それは確かだが近い心境を抱いているのかもしれない。
 この先にソローネが見たことも聞いたこともない、想像したことも無かったような景色があるのだろう。そのことを考えると胸の高鳴りを感じるのと同時に、身体の奥から波のように押し寄せる感情があった。
 血の繋がらない親に縛られ、命令を聞くだけの日々に鬱屈していたのは同じだったはずなのに。
 自由を手にするための旅――どうしてここにあんたがいないんだろうって、考えずにはいられなかった。






※ここから言い訳エリア
・自分はとても酔いまくる人間なので、ゲームをするにも乗り物に乗るにも酔い止めは必須です。酔わない人羨ましいなあ……
・海って……怖いよね……(自分はカナヅチです)
※ここまで言い訳エリア

 うおーピルソロー!って頭の中がいっぱいで気付いたら書いてました。(挨拶)
 電車に乗りながら好きな本を読み返しながら自分のピルソロの小説を直しながら、な時にふと書きたくなった代物です。つまり大体の形は二週間くらい前に出来ておりました。
 さくっとついでも読めるように2000字くらい!って思って最初に数えたら2007字とかでした(推敲で増えたけど)。こういう話をさらっと書ける人が本当に羨ましい……。

 カップリングとは言っていますが、自分としてはピルロ→→→←ソローネくらいで、恋愛的というのとはちょっと違う感じがですね、良いですね。
 そしてやっぱり嵌まれば嵌まる程胃が痛くなる組み合わせですね。辛いですね。最高ですね。なんでかね、幸せな二人を見ていたいなってのとは違うんですよね、Sですねこの人。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。
 もしよろしければ拍手やコメントなどいただけると嬉しくて飛び跳ねます。


※P.S.
 数年前のピルソロを書いたこの世界を生き抜くための手段ほうほうもよろしくお願いします。

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