ポケ迷宮。
ネッツの端っこにあるヴィオののんびり日記的な旧時代的個人ブログ。大体気に入ったゲームについて語ってます。
――もっと皆の心に残るような仙花焔を作りたい。
ドラガリ小説2本目になります。
スオウとソフィが出てくる短めなお話です。カップリングではありません。
イベント「郷愁の空に咲く大輪の華」と、それぞれのキャラストのネタバレを含みます。
それでは、「小さな小さな夜の華」です。
どうぞ。
小さな小さな夜の華
夜の聖城の見回り中、廊下を歩きながら話していた時だった。
「ご両親にまた会いたいって思う?」
雑談中に家族の話になって、そして自分の両親はこの世にいないことを告げると、彼女はそれまでの会話から少しトーンを落として、その言葉を口にした。彼女の手元に向いている琥珀色のぱっちりとした瞳が、お互いの手からぶら下がっているランタンの灯りを反射して淡く輝いている。
両親に会いたくないと言えば、丸っきり嘘になる。父と喧嘩をし家を飛び出したところで、両親の姿や家庭の景色はぶつ切りになってしまっている。戻った頃には向こうはこの世を去っていたからだ。親への反抗心も、仙花焔への想いも、全て一度は墓の前に置いてきたのかもしれない、数日は何をしていたのか今でも記憶には無い。
でも虚ろになっていたそんな時、仙花焔が窓の外で打ち上がった。赤、黄、橙、蒼、翠……派手な華が暗闇の中に、鼓膜を震わせる爆音と共にいくつも咲いた。
刹那、空っぽだったはずの自分は、着の身着のまま家から飛び出していた。
その時の春節に飾られた街の景色を、一生忘れる事が無いだろう。無限とも思える色が灯った提灯が頭上で波を作っていて、様々な露店が賑やかしく客引きをしていた。談話する人混みを掻き分けているうちに、顔も知らない誰かに奢ってもらった包子が手の中にあった。空腹に耐えられず口に入れた時の包子の温かさは足の指の先にまで届いて、その火照った身体のまま会場に辿り着いた。
様々な人種の人間が揃って空に目を奪われていた。地上から一瞬では数えきれない数の細い尾が空へ旅立ったかと思うと、いくつもの紅色の爆発が起こり、夜であるのが嘘のように空が明るくなった。拍手と歓声に紛れてほんの僅かだけ遅れてやってきたどんどんどんという音が、スオウの心臓を叩いた。
その仙花焔は紛れもない生前の父の物だった。爆発事故に巻き込まれる前に納めていた物だった。
老若男女限らず多くの人を魅了していたあの空の華は、今でも鮮明に脳裏に描く事が出来る。
「両親に……」
会いたくないと言えば、嘘になる。
それでも。
「いいえ」
スオウは首をゆっくりと横に振った。
あの日の光景は生死の壁なんて関係無かったことを、スオウは知っている。
「僕があげる仙花焔も、きっと両親の元にも届いていますから」
『も』という不自然な副助詞に首を傾げながらも、ソフィは頷いた。
「そうよね、あれだけ大きく輝く華は他に知らないもの」
スオウ自身も強くそう思っている。だからこそ、色んな人に知ってほしいとも。
ふと頬に自分の髪の毛がふわりと触れる。外から風に乗って葉擦れの音が流れ込んでくるのに気付いた。霧の森に囲まれているこの城は、龍脈泉に劣らない飽和なマナに包まれて、清澄な空気が常に漂っている。
「スオウくんは、死んだ人はマナへ還るっていう話は聞いたことがある?」
自分もマナの事を考えていたので一瞬どきりとして背筋が沿ってしまう。多くの者が活動していない聖城に二人の足音が響いているだけで、自分の喫驚は声に出ていないようだ。
「教会で習いました。女神様に祈った魂はマナへと還るって」
「そしてマナは世界中に広がっていく、死んだ人の魂を乗せてね」
「あ、えっと……それは知らないです」
頭の中で構築されていた教会の景色があっという間に霞んでいく。どうやら表情に露骨に出てしまったようで、ソフィが意地悪そうに笑った。
「ふふ、これはアタシの持論だから、スオウくんが知らないのも当然だったりして」
「持論、ですか」そりゃ知らないわけだと反芻する。「でも素敵ですね、そのソフィさんの考え」
マナは空気の中に存在している。確かに霊魂がマナになるんだとしたら、たとえ死を迎えてしまっても、世界からの繋がりが断絶しないのは不思議じゃないのかもしれない。
そして、もしそれが事実だとしたら、
「スオウくんが仙花焔に込めたマナには……ご両親のマナも、詰まっているかもしれない」
そう思うのは、なんだか気恥ずかしい気持ちになる。
職人として自分は父に勝ちたい、超えたい。人を楽しませたいと思うと同時に、未だにその意地という名の炎は心の中に煌々と燃え続けている。未だにこの気持ちを隠しきれないまま仙花焔を作っているのも事実だ。この負けん気が伝わっているのか……仙花焔から父の叱咤が聞こえてきそうな気がしてくる。
ただ、それだけならまだ良い。
自然と足が重くなった。このずっしりと沼の中で身動きが出来ないような重たさは、罪悪感、なんだろうか。
「僕は、決して親孝行者ではありませんでした。母の作ってくれた料理を、徹夜で仙花焔製作に熱中してダメにしてしまったこともあるし、父とは考え方の違いでしょっちゅう対立してました。何より父とは今でも喧嘩しっぱなしで」
「うん」
スオウよりちょっと遅れてソフィも立ち止まり、言葉短く頷く。
「でも、そんな僕をまだ支えてくれるなんて、申し訳ないというか……」
「実のご両親でしょ? スオウくんは子供なんだから、申し訳ないなんて思う必要ないんじゃないか、なっ」
「ぅわっ」
ソフィが手元に持ったランタンを突然目前に持ってきて、瞳孔の広がった目にチカチカと刺激を与えてきた。視界の眩みが脳にまで届いて、次に発しようと思っていた言葉を声帯に流す前に消し飛んでしまった。
「ちょ、何するんですか!」
反射的に声を荒らげてしまい、ぼうっと暖色に照らされるソフィの顔を恨みがましく睨むと、彼女は口の前で人差し指を立てる。誰もが寝静まった場所で大声は確かにまずい。「す、すいません」思わず周囲を見回してこれまた反射的に囁き声で謝る。……ん? 僕が悪いんだろうか?
「うん、よろしい」
ソフィは胸を張ってスオウから少し距離を取る。彼女が手に持っているランタンが薄く自分の足元に影を落とす。その背格好は女性のそれなので、もちろんスオウよりは一回り小さい。でも、今は委縮している自分には幾分か大きく見えて、多分口に出したら怒られるような気がするが、普段叱らない生前の母が機嫌を悪くした時の事を思い出した。何を言っても言い訳のような気がして、口をつぐんだまま気持ちと一緒に視線を逸らした。
こうして立ち止まると、やはり廊下を流れる風をわずかに感じる。霧の森から流れてくる穏やかな風は、正面にいるソフィの声を、スオウの耳に届けにきた。
「アタシはね、マナをずっと観測してきた。そしてここに来て……聖城は、マナが入り乱れてて、そして城の人達と同じように、色んなマナが共存しあってるわ。本当に凄い事なんだけど、えっと、今はその説明は止めておくね」後半は声がくぐもったが、軽く咳払いが入って、「場所だけじゃない、人もいっぱい観測してきたわ。もちろん、スオウくんもね」
「いつの間に……」
「アタシだって研究者なんだからね。マナを操って物を作る職人さんなんて、真っ先に興味持たれる人と言っても過言じゃないのよ?」
「え、え?」
さらっとなんか衝撃的な事を言われた気がする。
「あ、でもマナの観測はスコープとか使って、その、外から眺めれば良いだけだから、何か対象者に影響があるわけじゃないから、安心してね」
即座に取り繕われたが、自身の知らない間に『眺められていた』のもどうにも背中がむず痒い。というか今のが本当ならソフィならまだ人倫を持ち合わせているので構わないと思えるが、いささかネジが外れているクレイマンとかに食事に変な物入れられていてもおかしくない……のかもしれない、安全な場所だからと割と普段は気を抜いて生活していたのだけど、気を付けよう。
小さな決意を固めているスオウの前で、ソフィは静かに話してくれた。
「スオウくんの周囲のマナは、とても安定していて暖かかった。普段からマナを使っているからだと結論づけていたけど、それだけじゃないのね。今話して確信したわ……きっと、ご両親が見守ってくれているからよ」
一つ一つの単語が胸にじんわりと入ってくる。断絶された関係の両親は、死んでも尚、身近にいるかもしれない。そんなこと突然言われても、上手く飲み込めない。喉仏の辺りでつっかえてしまっている。
もう会えない事を何度後悔したか。その上後悔の念を重ねたところで、更に不肖な息子であることを、加速させているだけなのかもしれない。
今でもこんな自分の背を押してくれている両親には、見せたいのは感謝だ。それに目の前にいる彼女にも、この城にいる人達、今まで出会ってきた人達、これから出会う人達――色んな人に支えられている自分が、誰かの支えになりたい。
自分が出来ることで、それが叶うのなら。
もっと。――もっと皆の心に残るような仙花焔を作りたい。
「か、勝手に観測してごめんね、アタシもちょっと人見知りなところ、治さないといけないなとは思っているんだけど……予めスオウくんに断っておけば」
考えていた沈黙の間が不機嫌と捉えられてしまったのか、ソフィが顔を逸らして早口で攻め立ててくるのを、
「えいっ」
「きゃっ」
ソフィの前に回り込み、手に持っていたランタンを彼女の顔に一瞬だけ急接近させる。乱暴に扱われたランタンが手の中でぶらぶらと揺れ、聖城の広い廊下を不秩序に照らしている。
「ちょ、ちょっと、もう……!」
乱れた前髪を整えながら、琥珀色の瞳が恨みがましく見上げてくるので、「仕返しです」と言って先程の彼女の真似をして肩を竦めて意地悪に笑って見せた。しかし綻ばせた顔もすぐに戻して、
「ソフィさん。僕のマナが気になるなら、また調べてもらって良いです」
きっぱりと承諾を言い切る。
「僕もマナに携わる身です。良ければ、また何か教えていただけませんか? 僕も何か教えられる事があれば教えますから」
職人と研究者と、形は違えど、スオウとソフィは同じように目指しているものがある。実行に移す事を尊敬こそすれ、軽蔑なんてしない。
それに、彼女のおかげでまた一つ大切な事に気付けたから。
ソフィの見開いた目が何かを探すように泳いだ。それから元々少し垂れている目尻がまた更に下がり、くしゃっと笑った。
「ええ、喜んで」
お互いの手元に灯ったランタンは、何処となくあの夜に見た空の華を彷彿とさせた。
それは、人に希望を与える輝きだ。
夜の聖城の見回り中、廊下を歩きながら話していた時だった。
「ご両親にまた会いたいって思う?」
雑談中に家族の話になって、そして自分の両親はこの世にいないことを告げると、彼女はそれまでの会話から少しトーンを落として、その言葉を口にした。彼女の手元に向いている琥珀色のぱっちりとした瞳が、お互いの手からぶら下がっているランタンの灯りを反射して淡く輝いている。
両親に会いたくないと言えば、丸っきり嘘になる。父と喧嘩をし家を飛び出したところで、両親の姿や家庭の景色はぶつ切りになってしまっている。戻った頃には向こうはこの世を去っていたからだ。親への反抗心も、仙花焔への想いも、全て一度は墓の前に置いてきたのかもしれない、数日は何をしていたのか今でも記憶には無い。
でも虚ろになっていたそんな時、仙花焔が窓の外で打ち上がった。赤、黄、橙、蒼、翠……派手な華が暗闇の中に、鼓膜を震わせる爆音と共にいくつも咲いた。
刹那、空っぽだったはずの自分は、着の身着のまま家から飛び出していた。
その時の春節に飾られた街の景色を、一生忘れる事が無いだろう。無限とも思える色が灯った提灯が頭上で波を作っていて、様々な露店が賑やかしく客引きをしていた。談話する人混みを掻き分けているうちに、顔も知らない誰かに奢ってもらった包子が手の中にあった。空腹に耐えられず口に入れた時の包子の温かさは足の指の先にまで届いて、その火照った身体のまま会場に辿り着いた。
様々な人種の人間が揃って空に目を奪われていた。地上から一瞬では数えきれない数の細い尾が空へ旅立ったかと思うと、いくつもの紅色の爆発が起こり、夜であるのが嘘のように空が明るくなった。拍手と歓声に紛れてほんの僅かだけ遅れてやってきたどんどんどんという音が、スオウの心臓を叩いた。
その仙花焔は紛れもない生前の父の物だった。爆発事故に巻き込まれる前に納めていた物だった。
老若男女限らず多くの人を魅了していたあの空の華は、今でも鮮明に脳裏に描く事が出来る。
「両親に……」
会いたくないと言えば、嘘になる。
それでも。
「いいえ」
スオウは首をゆっくりと横に振った。
あの日の光景は生死の壁なんて関係無かったことを、スオウは知っている。
「僕があげる仙花焔も、きっと両親の元にも届いていますから」
『も』という不自然な副助詞に首を傾げながらも、ソフィは頷いた。
「そうよね、あれだけ大きく輝く華は他に知らないもの」
スオウ自身も強くそう思っている。だからこそ、色んな人に知ってほしいとも。
ふと頬に自分の髪の毛がふわりと触れる。外から風に乗って葉擦れの音が流れ込んでくるのに気付いた。霧の森に囲まれているこの城は、龍脈泉に劣らない飽和なマナに包まれて、清澄な空気が常に漂っている。
「スオウくんは、死んだ人はマナへ還るっていう話は聞いたことがある?」
自分もマナの事を考えていたので一瞬どきりとして背筋が沿ってしまう。多くの者が活動していない聖城に二人の足音が響いているだけで、自分の喫驚は声に出ていないようだ。
「教会で習いました。女神様に祈った魂はマナへと還るって」
「そしてマナは世界中に広がっていく、死んだ人の魂を乗せてね」
「あ、えっと……それは知らないです」
頭の中で構築されていた教会の景色があっという間に霞んでいく。どうやら表情に露骨に出てしまったようで、ソフィが意地悪そうに笑った。
「ふふ、これはアタシの持論だから、スオウくんが知らないのも当然だったりして」
「持論、ですか」そりゃ知らないわけだと反芻する。「でも素敵ですね、そのソフィさんの考え」
マナは空気の中に存在している。確かに霊魂がマナになるんだとしたら、たとえ死を迎えてしまっても、世界からの繋がりが断絶しないのは不思議じゃないのかもしれない。
そして、もしそれが事実だとしたら、
「スオウくんが仙花焔に込めたマナには……ご両親のマナも、詰まっているかもしれない」
そう思うのは、なんだか気恥ずかしい気持ちになる。
職人として自分は父に勝ちたい、超えたい。人を楽しませたいと思うと同時に、未だにその意地という名の炎は心の中に煌々と燃え続けている。未だにこの気持ちを隠しきれないまま仙花焔を作っているのも事実だ。この負けん気が伝わっているのか……仙花焔から父の叱咤が聞こえてきそうな気がしてくる。
ただ、それだけならまだ良い。
自然と足が重くなった。このずっしりと沼の中で身動きが出来ないような重たさは、罪悪感、なんだろうか。
「僕は、決して親孝行者ではありませんでした。母の作ってくれた料理を、徹夜で仙花焔製作に熱中してダメにしてしまったこともあるし、父とは考え方の違いでしょっちゅう対立してました。何より父とは今でも喧嘩しっぱなしで」
「うん」
スオウよりちょっと遅れてソフィも立ち止まり、言葉短く頷く。
「でも、そんな僕をまだ支えてくれるなんて、申し訳ないというか……」
「実のご両親でしょ? スオウくんは子供なんだから、申し訳ないなんて思う必要ないんじゃないか、なっ」
「ぅわっ」
ソフィが手元に持ったランタンを突然目前に持ってきて、瞳孔の広がった目にチカチカと刺激を与えてきた。視界の眩みが脳にまで届いて、次に発しようと思っていた言葉を声帯に流す前に消し飛んでしまった。
「ちょ、何するんですか!」
反射的に声を荒らげてしまい、ぼうっと暖色に照らされるソフィの顔を恨みがましく睨むと、彼女は口の前で人差し指を立てる。誰もが寝静まった場所で大声は確かにまずい。「す、すいません」思わず周囲を見回してこれまた反射的に囁き声で謝る。……ん? 僕が悪いんだろうか?
「うん、よろしい」
ソフィは胸を張ってスオウから少し距離を取る。彼女が手に持っているランタンが薄く自分の足元に影を落とす。その背格好は女性のそれなので、もちろんスオウよりは一回り小さい。でも、今は委縮している自分には幾分か大きく見えて、多分口に出したら怒られるような気がするが、普段叱らない生前の母が機嫌を悪くした時の事を思い出した。何を言っても言い訳のような気がして、口をつぐんだまま気持ちと一緒に視線を逸らした。
こうして立ち止まると、やはり廊下を流れる風をわずかに感じる。霧の森から流れてくる穏やかな風は、正面にいるソフィの声を、スオウの耳に届けにきた。
「アタシはね、マナをずっと観測してきた。そしてここに来て……聖城は、マナが入り乱れてて、そして城の人達と同じように、色んなマナが共存しあってるわ。本当に凄い事なんだけど、えっと、今はその説明は止めておくね」後半は声がくぐもったが、軽く咳払いが入って、「場所だけじゃない、人もいっぱい観測してきたわ。もちろん、スオウくんもね」
「いつの間に……」
「アタシだって研究者なんだからね。マナを操って物を作る職人さんなんて、真っ先に興味持たれる人と言っても過言じゃないのよ?」
「え、え?」
さらっとなんか衝撃的な事を言われた気がする。
「あ、でもマナの観測はスコープとか使って、その、外から眺めれば良いだけだから、何か対象者に影響があるわけじゃないから、安心してね」
即座に取り繕われたが、自身の知らない間に『眺められていた』のもどうにも背中がむず痒い。というか今のが本当ならソフィならまだ人倫を持ち合わせているので構わないと思えるが、いささかネジが外れているクレイマンとかに食事に変な物入れられていてもおかしくない……のかもしれない、安全な場所だからと割と普段は気を抜いて生活していたのだけど、気を付けよう。
小さな決意を固めているスオウの前で、ソフィは静かに話してくれた。
「スオウくんの周囲のマナは、とても安定していて暖かかった。普段からマナを使っているからだと結論づけていたけど、それだけじゃないのね。今話して確信したわ……きっと、ご両親が見守ってくれているからよ」
一つ一つの単語が胸にじんわりと入ってくる。断絶された関係の両親は、死んでも尚、身近にいるかもしれない。そんなこと突然言われても、上手く飲み込めない。喉仏の辺りでつっかえてしまっている。
もう会えない事を何度後悔したか。その上後悔の念を重ねたところで、更に不肖な息子であることを、加速させているだけなのかもしれない。
今でもこんな自分の背を押してくれている両親には、見せたいのは感謝だ。それに目の前にいる彼女にも、この城にいる人達、今まで出会ってきた人達、これから出会う人達――色んな人に支えられている自分が、誰かの支えになりたい。
自分が出来ることで、それが叶うのなら。
もっと。――もっと皆の心に残るような仙花焔を作りたい。
「か、勝手に観測してごめんね、アタシもちょっと人見知りなところ、治さないといけないなとは思っているんだけど……予めスオウくんに断っておけば」
考えていた沈黙の間が不機嫌と捉えられてしまったのか、ソフィが顔を逸らして早口で攻め立ててくるのを、
「えいっ」
「きゃっ」
ソフィの前に回り込み、手に持っていたランタンを彼女の顔に一瞬だけ急接近させる。乱暴に扱われたランタンが手の中でぶらぶらと揺れ、聖城の広い廊下を不秩序に照らしている。
「ちょ、ちょっと、もう……!」
乱れた前髪を整えながら、琥珀色の瞳が恨みがましく見上げてくるので、「仕返しです」と言って先程の彼女の真似をして肩を竦めて意地悪に笑って見せた。しかし綻ばせた顔もすぐに戻して、
「ソフィさん。僕のマナが気になるなら、また調べてもらって良いです」
きっぱりと承諾を言い切る。
「僕もマナに携わる身です。良ければ、また何か教えていただけませんか? 僕も何か教えられる事があれば教えますから」
職人と研究者と、形は違えど、スオウとソフィは同じように目指しているものがある。実行に移す事を尊敬こそすれ、軽蔑なんてしない。
それに、彼女のおかげでまた一つ大切な事に気付けたから。
ソフィの見開いた目が何かを探すように泳いだ。それから元々少し垂れている目尻がまた更に下がり、くしゃっと笑った。
「ええ、喜んで」
お互いの手元に灯ったランタンは、何処となくあの夜に見た空の華を彷彿とさせた。
それは、人に希望を与える輝きだ。
※ここから言い訳エリア
・スオウの挫折&立ち直りエピソードはかなり脚色してます。仙花焔から希望を貰ったことは事実です(キャラスト4話より)
・絶対ソフィのが歳上で、スオウのが身長高いよねアアアアア
※ここまで言い訳エリア
スオウの短いお話書きたいな~から始まりましたが、誰と対で書くかを考えてキャラ一覧眺め出し、改めてソフィの可愛さを実感したので気付いたらこの二人になっていました(挨拶)。
ボリュームが予定より10割増しになりました。いつものことです。
タイトルもほぼほぼ書き上がってから決まりました。いつものことです。
ちなみに明日で今年の春節は終わるそうです。
そしてなんか少女漫画チックになったが気のせいだ。恋愛ではない。
ソフィが前髪を整えてる時スオウにさせたくなったとかそんなのはない。気のせいだ。
いつもは話の流れ凄い曖昧に書くところからスタートするんだけど、今回はソフィの一言から流されるがままに書きました。こういうのたまにある。
そんなわけで紆余曲折を経たので、一週間で書いてチェックしてアップするつもりが、気付けば一か月経ってました。没文章もいっぱいいっぱい。ははは。
スクショはその……コラボのやつ使う気でいたら案外荒かったので、前と同じクロノスにしようと思ったんだけど、メモリーイベントだと登場シーン見れないんですね……。という裏話。
改めてこの二人のキャラスト読み直したりとかしててやっぱり良いなって思いました。ええ、とても控えめに言ってます。
スオウ自体は、実を言うとイベントの時にはあまり魅力を感じていませんでした。
でもキャラストを読んで、なんか好きになったんだよね。真面目だけど、ちょっとなんか問題があるっていうキャラが好きというか。問題があったのはイベントの時からわかるじゃん!って話なんだけどね?
そしてしばらく後にゆるがりあで再登場して、その時に実は髪の毛ちょっと長い系男子なことを知りました。目が悪いのか……?
ソフィはまず立ち絵から。なんなんですかあの髪の毛ふわーは。可愛すぎる。死ぬ。
そしてウインク顔の可愛さに死ぬ。と完全に見た目から入りました。
マナサ70解放されてすぐに70にしたよ、スオウもだけど。
CV小清水というのも背中を押す一因になりました。といっても好きなのはギアスのカレンのような張った演技だったりするのだけれどもね。
短い話を書いた理由としては、ある意味これはリハビリというか。
できるかはわからないけど、別にドラガリの小説も書いてたりとか書いてないとか。
まあそれ書いている間にこうやってまた小話挟むかも。
というか挟みます。
がんばりまーす。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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・小説(ゲームの二次創作)書いたり、ゲーム内の台詞まとめたり
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