ポケ迷宮。
ネッツの端っこにあるヴィオののんびり日記的な旧時代的個人ブログ。大体気に入ったゲームについて語ってます。
遠くで泣き声がする。
泣き虫な、君の声。
何気にドラガリは初めての小説。
2周年おめでとう!
上の画像に「☆2nd anniversary☆」とか描こうとしたけど普段から汚い字に加えて、指で描くのは至難の技だった。
1年目と2年目のフェスキャラが出てくる少し短いシリアスめのお話です。
ストーリー14章及びゼーナのキャラストまで読んでた方が多分良いと思います。
ちなみに、このツイートをネタにした小説です。
ところで光王子が手にしてるこの石なんだろうと一年前からずーっと思ってたんだけど……(当時はキャラストでわかると信じてた)
ゼシアの飾りを引きちぎったのか聖片なのかはっきりして王子 pic.twitter.com/sdx641OpZu
— ヴィオ@ドラガリ垢 (@name_heinden) September 11, 2020
※引きちぎってます。
それではどうぞ。
cry sky cring
遠くで泣き声がする。
その頃は、城壁に囲まれた世界で自分が全て完結していた。しかし、短い足にはそんな世界でもただただ広大で、雑多な人間が雑多に動いていて目が回りそうな日々だった。そんな中でも、いつでも自分の耳には明確にその声が聞こえた。
喧騒から外れ、自分達の部屋に駆け込んだ。寝具の裏で一人きり、部屋の隅で誰にも聞こえないような嗚咽を漏らしている。人見知りな彼女はよくここで緊張を堪えきれずに泣いているのだ。城でその声が聞こえていたのは、きっと自分だけ。手を伸ばせるのもきっと。
「ゼ──」
「きゃっ」
小さな悲鳴が聞こえ、ぼうっとしていた脳の芯に殴打されたような鈍痛が走る。ほんのりと身体が火照って指先まで温かい。目前に広がる風景は見慣れたものではあったが夢に見た城とは別の城で、今いる部屋も自室でなく執務室だ。どうやら書類を前にしてうたた寝をしてしまったらしかった。
「ご、ごめん」
無意識のうちに掴んでいた彼女の細い手を慌てて離した。
自分の背後に置かれた窓から射す陽光が、少女を朧気に照らしている。時間はまだ昼だ。どれ程意識が飛んでいたのだろうか、手元の資料の山もまだほとんど片付いていないな、と頭の大半でそんなことを考えていると、同じ色の髪を持つ彼女が気まずそうに声をかける。
「大丈夫ですか? 最近あまり休まれていないのでは」
「いや、休んでる、と思うんだけど」
心配そうに覗き込む彼女の瞳には、少しやつれた自分の顔が微苦笑して映っていた。休んでいる、その意識はしていたはずだが、連日魔獣と帝国兵の対応で休息が減っていたのは確かだ。魔神が、皇帝がいなくなっても、いや、むしろ突然戦争が終息したからこそ、この国の混乱は続いていた。
「この紅茶を飲んで、少し休んでください」
眠っていた自分を気遣ってくれたのだろう、一度は棚に置いていた紅茶を改めて差し出しながら柔らかく、しかし強めの口調で言った。
「ありがとう、ゼーナ」
少し蜂蜜が入っているようで、ユーディルの鼻腔を甘い香りがくすぐる。マグカップに手を伸ばしかけて、指の爪にこつんと何かが当たった。
「あ、この石……」
真っ先に反応したのは自分ではなくゼーナだった。小指の大きさにも満たない青空色の涙滴型の石に、紐状の金具が取り付けられている。
「ああ、それはゼシアの」
言いかけて、自然と口が止まる。多くを語らなくても彼女は知っているだろう。これは、元々はこの世界の彼女の物だ。違った形で彼女の元にあった物を自分の我が儘で弄って、こうして別の形にしてしまっているのだ。
「……ごめん、勝手に」
だからか、そんな言葉が自然と口から漏れていた。謝る相手は目の前にいる彼女ではない、それでも同じ顔を持った少女に、ユーディルは頭を下げていた。
「あ、謝らないでください。良いんです」面食らったように、ゼーナは控えめに手を振った。「私はその、嬉しいんです。いつも自分の欠片が兄さまのお側にあると思うと……嬉しいんです」
穏和に彼女は笑った。陽光を受けた彼女の笑顔は一瞬でも女神イリアを彷彿とさせる。自分の知っている妹の笑顔とは少し違う、眉をハの字にしてきゅっと結んだ口で薄く笑う、大人びた笑顔だった。彼女はいつからこうして笑うようになったのだろう。
手元に転がる石をそっと握りしめると、ひんやりとした感触が温まった指先に伝わってくる。
「君の世界のおれの、些細な事までおれには解らない」
心の奥底から沸いてくる言葉が、自然と口から落ちていた。手の中にある石を胸元に引き寄せて、ユーディルは言葉を続ける。
「だけどおれなら、きっと同じようにしていると、そう思うよ」
紅茶から漂う湯気の向こうで、彼女は少しだけ顔を伏せて独りごちに呟いた。
「……そうだと良いなって、私も思います」
そう、おれなら。
同じようにしているはずだと。
+++++
「ふぅん……」
指の先にぶら下げた紐の先にある物が月の光を浴びて青白く輝き、その光が淡く乱反射して、視界に届く。玉座に沈む身体に居心地の良さを感じながら、軽い溜め息を吐いた。
存外にかの人物は妹君の事が好きらしい。そのおかげで自分が欲しかったものが素晴らしく簡単に、そして最高の形で手に入ってしまったのだから、そのくだらない感情には感謝してもし足りない。
この身体の懐に仕舞われていたこのペンダントを眺めるうちに、すんでのところで逃げられてしまった少女を思い出す。希望が潰えた世界で、いつまでも目障りに動き回るヒューマンの少女が再び滑稽な姿を見せてくれるのが、今から楽しみで仕方がなかった。
口の端が思わずあがってしまうのを感じながら、ペンダントを足元へ投げ棄てる。己以外に踏み込む者のいない深夜の謁見の間に、乾いた音が鳴る。石の存在はあまりにも矮小で、その浅い音が壁に当たることもない。
魔神はゆっくりと目を閉じた。仄かな明かりも刺さない、視界は深淵に覆われる。
遠くで。
遠くで泣き声がする。
この闇色の空が広がる世界で抵抗を続ける忌々しい声が、魔神の耳に反芻する。
遠くで、泣き声が──
20.9.27 ヴィオ(twitter:@name_heinden or @chiika_kirby)
※ここから言い訳エリア
・話的には14話の後、15話の前くらいのイメージ。その間は聖城にいない?気のせい気のせい。
・本当に引きちぎったかは知りません……解明はいつですか……
※ここまで言い訳エリア
なんでこんな暗くなったんだろうね(挨拶)。
別ゲーの二次創作でもギャグのはずが……みたいなことになってたので、自分の創作物がそういう道を辿るのは必然なんだと思います(?)
製作期間は1週間くらい。27日の2日前まで2周年は29日だと思って調子に乗っていたため、当日午前中はほぼこれとドラガリで潰れました。
更にTwitterに創作物をあげること自体が初めてなので(いつもここにしかあげてないし、もっと昔だと小説投稿サイトみたいなのにあげていたことはあった)、試行錯誤してました。大体アプリで何とかなる世の中、感謝しかない。
当初は魔神の視点を入れる気は全く予定には無かったのですが、ユーディルがなんか異界から語り掛けてきたので急遽追加。個人的にはお気に入りなシーンになりました。
いつも話を書く前に超簡単にプロット的なものを書くのですが、今回は短めの、SSのイメージでワンシーンのみの予定で書いてたので作成はしてません。ここ大事、ワンシーンのみの予定だった……。
今は別ゲーの書きかけのをさっさとあげなきゃ……4か月くらい経ってる……みたいなことになってるけど、ドラガリも何か書けると良いなぁなんてのはちょっと思ってたり。
それこそ自分の好きなキャラとか、書けたら幸せかもしれない。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
拍手やコメントなどいただけますと嬉しくて飛び跳ねます。
☆こちらもよろしくお願いします。
小さな小さな夜の華(ドラガリ小説2作目。スオウとソフィのちょっと真面目なお話)
爪痕を覗いた日(ドラガリ小説3作目。ノエルとノーストンのちょっと真面目なお話)
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HN:ヴィオHP:性別:非公開自己紹介:・色々なジャンルのゲームを触る自称ゲーマー
・どんなゲームでも大体腕前は中の下~上の下辺りに生息
・小説(ゲームの二次創作)書いたり、ゲーム内の台詞まとめたり
【所持ゲーム機】
・SFC GC(GBAプレイ可) Wii WiiU NSw NSwlite PS2 PS3 PS4 PS5
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