ポケ迷宮。
ネッツの端っこにあるヴィオののんびり日記的な旧時代的個人ブログ。大体気に入ったゲームについて語ってます。
オクトラ2小説13作目。
キャスティとヒカリのカップリング(ヒカキャス)要素そこそこなヒカリ4章+キャスティ1章を元にしたお話です。
テメノスも結構出てきます。
「ヒカリ4章まで」「キャスティ3章まで」「テメノス3章ストームヘイル編」「ソローネ2章母ノ編」「オーシュット2章グラチェス編」のネタバレを含みます。
字数は4万6千字程です。相変わらず一記事に入らなかったので三分割しています。
それでは「信の果て」です、どうぞ。
キャスティとヒカリのカップリング(ヒカキャス)要素そこそこなヒカリ4章+キャスティ1章を元にしたお話です。
テメノスも結構出てきます。
「ヒカリ4章まで」「キャスティ3章まで」「テメノス3章ストームヘイル編」「ソローネ2章母ノ編」「オーシュット2章グラチェス編」のネタバレを含みます。
字数は4万6千字程です。相変わらず一記事に入らなかったので三分割しています。
それでは「信の果て」です、どうぞ。
信の果て(1/3)
山が雲よりも高い位置にある。
この地方に来て真っ先に目を奪われた光景は地勢の低い港町や砂漠等では到底見られない景色である。途方もない高さで流線を描いている山脈は真っ白に染まり、中程で姿を隠してしまっている。
目指している街の端は小一時間前から見えているが、一向に辿り着かない。既に何度か足を運んでいるだろう人物達にその過酷な道のりは事前に聞いてはいたものだが、いざ直面すると歩きにくい雪山に恨みの念が出ないわけではなかった。
この地方特有の厚着を羽織っても尚、肌を突き刺してくるような寒さに、とりわけ暖かな島で育ったオーシュットはしきりに「さぶー……」とか「うーマヒナあったけー」とかぼやいては、相棒の梟を強く抱き抱えて足蹴にされている。
さっきからその様子を斜め後ろから、華奢な女性が口を尖らせて羨ましげな視線を向けている。微笑ましい気持ちになって、思わず声をかけてしまう。
「ソローネ、我慢しないでいいのに」
「別に我慢なんか……」
普段は鋭い目を丸くして、勢い余って言葉が漏れ出てきた。
「ふふ、気持ちは解るわ」尻すぼみになった彼女の台詞を継ぐようにキャスティは頷いた。「じゃあ私とくっつく?」
「ば、」冗談交じりに言うと、今度は盛大に顔を逸らされた。襟元を寄せながら、「……それはヒカリに言ってやればいいのに」
先頭を歩くヒカリ、パルテティオ、アグネアの三人の背中に自然と視線が向かうが、それも一瞬でキャスティは問い返した。
「あら、どうして?」
仲間の中でも特段に彼が薄着なわけではないので、どうして彼を名指しにしてきたのか解らなくてきょとんとして訊き返した。
「うーん、まだ早いか……」
と人物指定してきた彼女の方はキャスティの問いには答えず、何故か苦い顔をしている。気分を悪くしてしまった理由に思い当たる節がないのが少し申し訳なくなったので、ソローネに微笑みかけながら、
「ソローネは私とじゃ嫌かしら?」
「そういうわけじゃないけどさ。こう寒いんじゃむしろ有難いけど、歩きにくいし、咄嗟の事態に対応できないから……気持ちだけもらっとくよ」
もっともな言い分で返されてキャスティも納得せざるを得ない。彼女の勘に助けられたことはこれまでの旅でも数えきれない。
「……ま、王子様もピリピリしてるだろうからね」
こちらは言葉の額通りの意味で言ったのだが、どうやらソローネは別問題も含んでいるものだと捉えられたらしく、彼女の思考そのまま会話を続けた。「私も仲間だと思ってた奴と命を懸けてここにいるから、だからなんとなくヒカリの気持ちが解るよ。今のヒカリに纏わりついてる空気は重くて……潰されそうだ」
ウィンターランド。一年の多くが雲に包まれ雪が舞っているこの地域に、キャスティと同道している仲間七人は来ている。ヒカリが国を牛耳る兄へ反旗を翻すための足掛かりとして、ライ・メイという旧友を訪ねるためであった。
その人物の事情は大陸違いで住んでいたヒカリよりも、東大陸に住み教会の内部事情にも精通しているテメノスの方が余程詳しかった。
テメノス曰く、この土地は雪国故に資源に乏しく大なり小なり内紛が絶えなかったそうで、ここ最近その数が減っているのは治安平定を進めているメイ家の進出があったからだという。「本当は我々教会が秩序を作るべきなんですけどね、嘆かわしい限りです」と溜め息交じりに締めたのを、キャスティは考え事をしながら聞いていた。
過去から断絶され孤独から始まったキャスティの記憶には、知人と言える者達はいない。敢えて今言えるのであれば、記憶を失くし漂流した先で出会ったマレーヤは同じエイル薬師団で活動をしていたはずなのだが、再会した彼女の方は昔馴染みだったという態度ではなかった。彼女との関係性は、依然と掴めずにいるままだ。
そんな身であるからか、これから出会いにいく女性の話を聞いて、少しだけ心がざわついた。かつての友を求めて旅をするヒカリを少し羨んでしまう気持ちがあったのだという結論に辿り着いた。
「あ」突然、隣にいたソローネが声を上げる。「ごめん、服絡まったかも」
くい、と軽く引っ張られる感覚があり、キャスティの胸元から僅かな圧迫を感じた。袈裟懸けにしたベージュの鞄の何処かが、ソローネの服に引っかかったらしい。
「お、取れた……かな?」
独り言ちながらソローネが手早く解決させる。手先の器用さに感心しながら、キャスティは言った。
「ごめんなさい、私の不注意で」
「全然。誰が悪いとかじゃないって」そっと絡まった物から手を放しながら、彼女は続ける。「ついでみたいになるけど、それって何か訊いてもいい?」
引っ掛けていた平べったい石が彼女の白い手から滑りキャスティの鞄に触れる。雫の先を曲げたような、獣の爪のような、単純な言葉に表すならばそんな形の石で、太陽を削り取ったかのような暖かみを持った琥珀色をしている。
「これ、お守りなの」
「お守り。綺麗な石だからちょっと解るかも」
短い相槌を打って、彼女はそれ以上は何も訊かなかった。過去に触れるものじゃないかと気にかけてくれているのだろう。否定してもいいものか、と考えているうちにソローネは後ろを歩いていたオーシュットに声をかけられて傍を離れてしまった。
これはソローネを含めた旅の仲間達と出会う前に貰った物だ。記憶を失った自分が西大陸に流れ着いた、その日から大切にしている物。
そっと手を離して鞄からしっかりぶら下がっていることを確認し、キャスティは改めて視線を正面に向けた。
大昔に建造されたという巨大な岩壁に囲まれた、二つの大きな勢力がいる雪の街ストームヘイルに辿り着くには、もう少し時間がかかるようだ。
「お断りします」
八人が巨壁の街に着いた時には、もう太陽は山の向こうへと沈んでしまっていた。
酒場で夕食を終えてから宿場で二人部屋を四部屋取り、八人は男性部屋のうちパルテティオとヒカリの部屋へと集まった。
そこで真っ先に発したヒカリの意見に異を唱えたのはテメノスだった。暖炉の中から薪が焚かれる乾いた音が八人の背後で控えめに鳴っているのは、この部屋の中での空気が重く沈んでしまっているからだろう。
テメノスは絡まることを知らない直毛の銀髪の下で、話の中心にある青年を睨めつけていた。それも自明だと言えるかもしれない。
キャスティですら信じる、とは一概に言いきれる話ではなかった。
ヒカリが一人でライという人物へ話をつけに行く、ということは。
「あなたが知人を信頼しているのはよく解ります。ですが、私はあなたの知人まで信頼しているわけではない。ヒカリの知人はク国の事情についても明々白々に知っているはず」つらづらと言った後にテメノスは端的に、声音に殺気すら込めて、「ならば、あなたはお尋ね者です。死にますよ」
感情を捨てきった事実だけを公然と言い放った。
しかし、対面に座っていたヒカリは全ての言葉を受け止めても尚、堂々と座っている。琥珀の瞳の輝きは鈍ることがなかった。
「俺は死なん。友のため、志は必ず果たす」
ヒカリは正座と伸びた背筋を、ねじ曲げることは金輪際叶わないとでも言うように崩さない。動揺しているのは話を聞いている仲間達の方で、特にパルテティオとアグネアが固唾を呑んでいる音が聞こえてくるほどだ。
対面でその琥珀の眼差しを受け止めているテメノスは、やがて小さく息を吐いた。外で出していたならば煙のように彼の視界を覆っていただろう。
「……そうですか。ではもう止めませんよ。ご自由にしてください」
冷ややかに言い放って、常に冷静沈着に物事に対応するテメノスにしては珍しく、乱暴な足音を立てて部屋を足早に飛び出した。
「お、おい、テメノス……」
咄嗟に腰を浮かせたパルテティオが、気まずそうに周囲に視線を投げた。キャスティは彼の背中を叩いて、
「行ってあげて」
パルテティオが上着を引っ掴んで部屋を出る。アグネアも「上持ってくる」とパルテティオに声をかけながら後を追った。乱暴に扉が閉まると、先程と大きく変わらないはずなのに妙に居心地の悪い静けさが訪れる。
薪が乾いた音を立てるだけの、誰かと視線を合わせることも躊躇われるような中で、ソローネの黒紅色の瞳が話の中心人物を射抜いていた。
「……ヒカリ。あんたの言うことは解るけど、あいつの言うことも」
「解っている。テメノスの言うことは」ソローネの言葉を遮った声は冷静だった。「だが、俺は刀で語りに来たのではない。誠意を見せなければ話し合いの場すら望めまい」
そう言った横顔は、先程のテメノスの殺気に優るとも劣らない、決意に満ちたものだった。
ソローネの言う通り、キャスティにもテメノスの感情は理解できた。テメノスは自分達と出会う前、真実の追求を共にしていたクリックという青年をこの地で亡くしていると聞いた。行動を共にしていたというアグネアやソローネ曰く、正義感が強い、品行方正といったところには、初々しさは残るものの確かに聖堂騎士といった職業に適していた人物だったという。少し、ヒカリに似ているところがあるとも言っていた。
しかし、その正義感による彼の行動が不幸を招いてしまった。テメノスは彼の背中を押したことをひどく悔いていたし、更に過去にも同じような知人がいたとも零していた。
彼の頭の中で、ヒカリの提案は二人の行動と同じに映るのだ。普段は冷静なテメノスが激情を表に出してしまうのも無理のない話だった。
「……そ。なら私は何も言わないよ」
と言ったきりソローネも黙り込んだ。元々口数の少ない彼女ではあるが、他人が決めたことに口を出すことはもっと少ない。それは一方で、彼女自身が行うことに口を出されたくない、という意味合いもあるのかもしれない。キャスティがソローネと出会って間もない頃には、命を犠牲にするような賭けを平気でしていたくらいだ。彼女の根底には誰にも縛られたくないという感情が渦巻いているようにも思えた。
「すまない、友たちよ。俺の我儘で振り回してしまっているな」
先程とは打って変わって柔らかな物腰でヒカリは見回した。当然、キャスティとも目が合う。自分はどんな顔をしているのか、表面上は少なくとも彼を肯定している顔をしていると思っていた。自信はあまり無いけれど。
何か言おうとして、しかし先に口を開いたのは旅の仲間で唯一の獣人であるオーシュットだった。獣人の特徴である頭の上の耳をぴんと立てて、
「わたしは良いと思うよ。やろうとしてる本人が一番後悔しないやり方の方がさ」
胡坐の中心にいる梟のマヒナの毛を整えながらオーシュットは今日の天気を語るような調子で言う。この部屋に来てから彼女らは一番温かい暖炉の目前を離れようとはしない。
「それにひかりんは強いから大丈夫だよ。ね、おっちゃん」
「……分析は相対的なものだ。相手の規模や練度を知らねば解は出ん」
「うーん、確かに強いヤツを狩る時には大勢でやる必要があるもんなー。でも、ひかりんは狩りに行くんじゃなくて友達に会いに行くんでしょ?」
「ああ」
「喧嘩をしにいくわけでもないもんね?」
「そうだ」
凝然とした態度を崩さず、ヒカリは答える。オーシュットはその回答も解りきっていたかのように笑顔のまま頷いた。
「うん、わたしからはそんだけ」尻尾を揺らすオーシュットは、隣に座る大柄の男の横腹をつついた。「次はとっつぁんの番だよ」
「……」
彼女の突然の行動に一切動じることはなく、オズバルドは無言でヒカリに布袋を差し出した。男は青年からの訝しげな気配を受けて、初めて説明が必要なのだと気付いたように口を開いた。
「何かあればこの中に入っている魔法石を割れ。魔法石の研究をしている時に作った花火弾だ。割ると花火が出て、遠方にいても判る」
一頻り説明だけして満足したようにまた会話が止まる。やや言葉不足だが、これが打ち出された時は駆けつける、ということなのだろう。
「花火、か。害は無いのだな?」
「身体に害はない。俺が検証している」
「ありがとう、オズバルド。それでも使うことのないように祈っていてくれ」
「……」
ヒカリのお礼に、オズバルドは小さく頷いた。たったそれだけではあったが、彼の気遣いはこの場にいる者は感じていることだろう。
自分は、どうだろうか。
キャスティの中にはこれといった明確な解は無い。きっと自分の答えは結果の後にくっついてくる臆病者なのだ。意思がなければ意見を言う権利もないだろう。
まだ発言をしていないキャスティに自然と視線が集まっていたので、変に気を遣わないように「ヒカリ君」と呼びかける。自分が思っていたよりも落ち浮いた声色だった。「怪我をしたら私が治すから。だから、戻ってきてね」
「……ああ、必ず」
噛み締めるようにヒカリが言ったのを最後にそれ以上交わす言葉もなく、その場は解散することとなった。
キャスティはソローネと二人で冷え冷えとした廊下を歩いていると、反対側からパルテティオとアグネアがやってきた。
「俺はダメだ……不貞寝する」
「さっきからずっとこう言ってるの。そりゃテメノスさん、顔色一つ変えずに帰れしか言わなかったから仕方ないかもだけど」
だいぶ冷たくあしらわれたらしく、すっかり意気消沈していた。身体の冷え切った二人を労わって、既に暖まっているオズバルドとヒカリの相部屋に行くように提案して就寝の挨拶を交わして別れた。
戻ってきた火の無い部屋は冷え切っていて、廊下と大差ない。ソローネは「さむさむ」と口走りながらランタンの火をすぐに暖炉にも移すと、乾いた薪の音が心地良く部屋に響き始める。
「ありがとう。本当にこの寒さは特別ね」
キャスティは手袋の外した手に息を吹きかけながら、ソローネに話しかける。
「キャスティ」ランタンを鏡台の上に置いてソローネは椅子に座り込んだ。「テメノスがキャスティに酒場に来てくれって」
「テメノスが?」
「さっき出ていったのにそう言われたの?」
「うん。符丁でね」
そんなもので二人がやりとりできるのは初耳だったが、キャスティもまだ戻る様子もないテメノスのことは気になっていた。
「一人で……行くなら私はそっちの方が良いと思うな。色々と邪魔だろうし」
「邪魔なんてことはないと思うけれど」
「まあ、でも一人でって言ってたから」
別に気を曲げてるわけでも落としている様子もなく、彼女は淡白に言った。なんだか心持ち急かされてるようなので、キャスティも深くは追及せずに用意を始める。
「……じゃあ、行ってくるわね。鍵は……」
「持ってっていいよ、寝てるかもしれないし」
「そんな遅くに帰ってくるつもりはないけれど……」
外套を羽織り、鞄や身なりを一度確かめる。扉に手をかけようとして、
「そういえば、王子様も寝る前にメイ城見てくるって言ってたよ」
なんだか目的地を増やされてしまったのだった。
+++++
何処からか朧気な雪が踊るように空から落ちてきている。
気分を鬱屈させるような重たい雲はだいぶその厚さを抑え、皓々とした月が僅かな雲の切れ間から青白い月光が白銀の雪を照らして淡く輝いている。
人通りは既にだいぶ減っており、すれ違うのは欠伸をしながら夜の巡回を行っているメイ家の兵士くらいだ。不自然になり過ぎないように髪と頭巾で顔を隠しながら、ヒカリは街の高台の路地に辿り着いた。ここからなら家屋の隙間からメイ家の城を望むことができた。
岩壁を橋で越えた向こうには比較的規模のある堅固な建物が夜闇に溶け込むように佇んでいる。本国の城と違って飾り気のない風貌だったが、立っている旗は確かに見慣れたク国とメイ家の旗だった。
ここが、メイ家が城を構える地。
(ライ・メイ、そこにいるのか……)
三年前、父が戦を止めるまではよく顔を合わせていたはずの彼女の顔は鮮明に思い出すことができる。だが、どういう表情をしているかまでは読み取れなかった。
メイ家はク国拡充のため、この地を平定する足掛かりに、この雪国に移ったという経緯がある。元々の主命を下したのは父であり、兄の手は及んでいない。しかし、リューの宿場を旅立った時ですら地方中に自分が反乱を起こしたと専ら噂になっていた現実だってあるのだから、この遠く離れた地に、砂漠で巻き起こっている嵐は届いていないのだというのは空頼みなのだろう。
嘆息の跡が風に流されて霧散する。閉鎖的なように見える空はどこまでも途切れることがなく、遠い雪国の地まで来てもそれは変わらない。
それを意識して、ヒカリの背筋が僅かに凍った。三年という月日を経て穏やかになった祖国を見てきたはずなのに、ずっと追われているような感覚がある。
ふと背後に気配がして、ヒカリは思わず腰に佩いた刀に手を伸ばして振り返った。頭に被ったフードが煽られて脱げ、旋毛で結った髪の毛がヒカリの視界の邪魔をする。
その向こうから、ふわりと鼻孔を擽るのは彼女のいつものにおい。家々で薪が焚かれているにおいに混じって、彼女が扱う薬草達の香りがした。曇天の元でもなお眩く見える金色の髪がフードの下から覗いている。
「……キャスティ」
彼女の空色の瞳は映すものを反射するものの影響か鈍く、ヒカリの姿もぼやけて見える。
キャスティは微笑を浮かべた。控えめに手を挙げて呼びかけに答えると、隣に立ってヒカリと同じように視線を向ける。
「立派なお城ね」
彼女の呟きも、ヒカリの吐息と同じようにこの国を流れる冷風に流されていく。
「ああ。あそこには俺の友がいる。もう三年も会っていない……友が」
言葉にして、喉元で声が堰き止められているような感覚がした。知らず不安になっているのだろうか。
「あなたは考え事をしていると目が寄るわね」
「む」
急にキャスティから飛び出た自分の知り得ない自分の情報に、瞬きを何回もしてしまう。世界が明滅して、切り取られた世界がその度に網膜に焼き付く。視界の端に映り込んだ女性が頬を上げて唇を緩める様が段階的に変化する。
今度こそ、本当に目が寄っていた自覚がある。その様を見て、キャスティは両肩を揺らしてくすくすと笑った。時々こうして妙に子供っぽいところを見せるのは彼女なりの人付き合いの手段の一つなのだろう。老若男女問わず相対して治療を進めていかねばならない彼女から学ぶべき点は多い。
「……会うのが、心配?」
一しきり笑い終えた彼女は、そう切り出した。ヒカリは首を横に振った。
「ライ・メイは心強い友だ。俺は信じると、そう決めたのだ」
「そう」
端的に彼女は呟いた。彼女のその横顔に何かを問うのをヒカリは躊躇った。その顔は頭上の曇天のように陰りを落としている。心配という感情を抱えているのはヒカリよりも彼女の方のようだ。キャスティを含めた旅の仲間はライ・メイのことを知らず、彼女の情報は客観的に見た立場とヒカリの主観の入った像のみで、信頼を得よというのは無理もない話である。
「……俺にも、聞かせてくれ」ヒカリは自然と口を開いていた。「マレーヤはどういう者なのだ?」
キャスティは驚いたように顔を上げた。話の矛先が急に自分に向いたことよりも、ヒカリの言い方の方が気に障ったようだ。
「どういうって……会ってはいないとはいえ、あの場にいたのにちょっと他人行儀ね」
「ああ、うむ、今のは俺の訊き方が悪かった。あのカナルブラインの時……良ければその時の話をまた聞かせてくれぬか」
噛み締めるように言葉を選んだが、愁いを帯びて伏せた顔はヒカリを映してはいない。
「でも……そうね、他人行儀なのは、マレーヤもそうだもの……」
声を落として、寂しげに話した彼女から改めて聞いた話は、以前から聞いていたものと何も変わらなかった。カナルブラインで出会った女性と薬師として走り回っていたこと、だが彼女とは共に同じ薬師団で活動していたはずなのに、初めて会ったような対応をされたこと。
あの時、同じ街に来訪していたヒカリはマレーヤという女性の存在を知り得ない。だが、失った記憶の手掛かりとしてキャスティの心を支えている彼女のことを聞くたびに、胸の奥が縮むように疼いた。
「さて、宿に戻ろうか」
反抗するように、ヒカリは手を握りしめる。外気に晒されて凍てついた指先の感覚は薄い。気付けば掌に爪跡が残る程の強さが籠っていたから、キャスティに掌が見えないように右手はこの地に来る前に買った外套の隠しに、左手は腰に佩いた刀の柄頭に置いた。
突拍子もない申し出に、キャスティは小首を傾げる。
「もう良いの? もしかして私が来ちゃったから?」
「いや、一目見てもう戻ろうと思っていたところだ。風邪を引いてしまっては、俺は何しにここに来たのか見失ってしまうからな」
「ふふ、そうね。でも私は買い物してから帰るわ」
「買い物?」
「薬草とか、買っておきたいなって。早く帰れたら身体が温まる飲み物を持っていってあげるわね」
空から降る純白の雪に残った自分の足跡を、復路でも踏む。油断するとすぐに足元を掬われる極寒の地は、ヒノエウマとはまた違った厳しさを孕んだ土地だ。水はこんなに地面に溢れるほどあるのに、形を変えているせいで土に日は届かず、砂漠と同じく作物は育ちにくい。言を俟たず、少ない資源を取り合う関係にあるこの地の人間達も、ヒノエウマと同様に内紛は絶えなかったらしい。
だが、それを収めたのがこの地に移ったメイ家だと言う。つまりこの地は、兄が反乱を起こすまでの……父が戦を止め平穏の道を歩み始めていたク国と、同じ道筋を辿っているのである。
かくして、ヒカリは信じていた。
次の日の朝になってもテメノスと顔を合わせることはなかった。
「なんか俺が起きた時にはもういなくてよー」
幸か不幸か部屋は元々別室が充てがわれていて、テメノスと相部屋だったのはヒカリの目の前に座り込み大きな口でパンを放り込んでるパルテティオである。
「書き置きとかはなかったの? こっちはあったけど」
と次に口を開いたのはパルテティオの隣に座るソローネだった。彼女の言い分を聞き、肩肘を立てて青年は唸る。ホットミルクを喉に流し込みながら愚痴を零した。
「こっちはそんな気遣い無えなあ……やっぱキャスティはマメだなあ」
「マメでも、これだけシンプルだと何も判らないけどね」
八人と一匹の旅の仲間も、今朝集まったのはそのうちの六人と一匹。早朝からテメノスとキャスティは宿を出たらしいが、取り残された方は特に何も聞いていない。ソローネの言っていた書き置き、というのも『テメノスと街中に出掛けてきます。夕方に戻ります』と簡素なものである。買い物をするにも店は何処も開いていない時間だ。
キャスティのことも心配ではあるが、テメノスもこの街の聖堂騎士団との相性が悪い。教会内部の派閥争いに照らし合わせると、テメノスは敵地に乗り込んでいるようなものである。
だが、ヒカリも二人の行先にばかり構ってもいられない。自国の友たちのため、一刻も早くメイ家の助けを得ることが必要なのだ。今日の行く先を変えるわけにはいかない。
窓から外を眺めると、そんなヒカリの希望の未来を遮るかのように分厚い雲から数えきれない程の雪が降り注いでいた。
雪に隠された岩場が頑強だからこそ成立するような、横に並んで十人が渡れようかという大橋がそこにはあった。頭上は昨日と変わらない曇り空で陰影は薄く、端々に積もった雪も砂や土に汚れている。人の往来によって橋の隅以外は雪が溶けており、土と混じって濁った水溜りが出来ている。
橋の向こうには何百年分の歴史を湛えた、威容を放つ城がある。石作りである性質上元々色素が欠けているが、それを特別着飾っている様子はない。交差する槍と稲妻を印した旗が、極寒の風の煽りを受けるのみである。
もう陽は昇っているというのに、親柱には篝火が煌々と焚かれている。左右の端に設置された欄干の上を一定の距離を持って戦士を象った石像が左右に配置されているが、どうもこれはメイ家が来る以前から置かれている物らしく風雪に晒されて角が欠けたり削れたりしている箇所が見受けられる。
所有者の所在が宙ぶらりんになっていたこの城を、今はメイ家の城として利用している。元々賊の巣窟になっていたことと内紛を収めたのを口実にしているが、その態度には街の人からの賛否が分かれているらしい。やや腐敗しているとはいえ聖堂騎士団の本部があり、そことの争いを危惧している者がいるのは判りきったことだった。
橋には既知の通り、門兵が置かれていた。一様に濃紺の外套を身に着け、橋の傍で立ち尽くす一人の人間に刺すような気配を投げてきている。
嘘偽りで飾るつもりは毛頭ない。ヒカリは前へと歩み出た。何者かと問われる前に、雪除けの頭巾を脱ぎ声を張り上げる。
「ク国の王子、ヒカリと申す! ライ・メイ殿に謁見願いたい!」
晒されたヒカリの顔と名乗りに、しかし相対している兵は動揺を見せなかった。両手に槍を持ち、忽ち臨戦態勢へと入る。
「俺に戦いの意思はない」
諸手を頭の横に挙げるが、兵二人の態度に変わりはない。むしろヒカリが歩みを進めるにつれ、槍の切っ先はこちらへと傾いてきている。
「それ以上、動きなさるな。無抵抗で首を飛ばされたくないでしょう」
一兵から告げられたものではない深みのある声に、ふとヒカリは足を止めた。聞き覚えのある声だった。
「……ここは通せん、ヒカリ殿」城の門から出てくる影が一つ。その中でも一際秀でた貫目を持った男が告げた。「ヒカリ殿、そなたを拘束する。従わねば、力ずくでな」
乱れ舞う雪の中で、刈り込まれた麦藁色の髪が獣の鬣のような存在感を持っていた。同じく蓄えられた顎鬚の奥には深い皺が刻み込まれているものの、年齢を重ねて尚も鋭い闘気を纏う様はヒカリの毛を逆立てさせた。名は、クンゾ。ライ・メイの槍の師匠だったはずだ。
顔の横にあげた両手を今すぐにでも下ろせと脳が発しているのを、ヒカリは追い払うように声を上げた。
「そなたは、ライ・メイの家臣だったな。戦いたくはない、俺は語らうために来たのだ」
ヒカリを射抜く眼差しに揺らぎは無い。宿老は槍の柄で石橋を叩いた。
「ほお、左様か。では、その手を下ろしてくだされ。語らいましょうぞ。剣にて……」
言下、門兵の二人が駆け出した。混じり気のない、槍の基本を忠実に守った二本の槍の突きが同時に襲い掛かる。
ヒカリは咄嗟に刀の鞘を腰布から引き抜いた。一歩前へ出て上体をずらし、峰に当たる部分で左から飛んできた槍を弾く。その槍の切っ先が右手方から現れた槍にぶつかり標的が逸れる。
蹈鞴を踏んだところへヒカリは姿勢を低くして踏み込み兵の懐に入り、手刀で肘を狙った。尺骨神経に走った激痛で兵は槍を落とす。
その槍が地面に落ちる前に柄を取って奪い取り、痛みに呻く男を蹴りで除けると同時に、身体を回転させる。ヒカリの身体と共に回転した槍は左から来る男の首元に叩き込まれ、男の身体を吹っ飛ばした。手から離れた槍が派手な音を立てて回転し、橋の下へと落ちていく。
瞬く間に訪れた剣戟と静寂に、クンゾは五歩程先で笹穂槍を隙も無く構えたまま素直な感嘆を漏らした。
「殺気も得物も出さずに、二人を戦闘不能とさせる技、見事ですな」
ヒカリは一つ息を吐く。身体の奥底で温まった息は湯気のように吐き出されて霧散する。
「……通らせてもらえないか」
「先程申しました。我が国では語るべきは口ではなく――武器です」
それは正に、雷鳴の如き槍使いであった。正確無比な槍先は迷わずヒカリの喉元を狙いすます。ヒカリはその動きを見るよりも早く石突を、刀を抜いて弾いていた。無理な姿勢で受け止めたせいか手に痺れが走り、石畳の上で溶けた氷に反射的に後ずさったヒカリの足跡が刻まれる。
晴れている日はぎらぎらと太陽光を乱反射させる積雪も、こう曇っていれば返照は無いも同然である。それでも一筋の光を放つクンゾの槍先は、疾風迅雷を掲げるメイ家を表しているかのようだ。
ヒカリの姿勢が整う前に、槍が残像すら見せずに迫る。なんとか刀で受け止めるが力に押し負け、またヒカリは身体を捩って槍先を躱して数歩下がった。果然、片手では攻撃を捌くにも限界がある。
その時、もう戦意が欠けたはずの別の男から気配が迫った。ヒカリの背後を狙った攻撃を回転して避け、男の脳天に鞘を投げつける。先程首元に槍の柄を受けた兵だが、今のヒカリの一撃でようやく気絶したらしい。それを意識の端で確認して、ヒカリは刀を正眼に構えた瞬間にクンゾの元へと踏み込んだ。直後、ヒカリがいた場所に風切り音と衝撃音が聞こえた。城の矢狭間から矢を射かけてきたからである。
「流石、一対多を熟知していらっしゃる」
「そなたに迫れば矢は射られまい?」
「……ふっ」
クンゾがヒカリの刃を涼しげに何度か受け流し距離を取ろうとする。かと思えば、急に攻め手に入って急所へと牙を向ける。油断のならない攻防が二、三度続き、刀の刃と槍の中程が交差し、互いに押し合いになった。
最近は魔獣退治の方が多く、人とこうして刃を交わすことは数える程である。旅の仲間の剣として時には対人にも振るってきてはいるが、しかし達人級の腕前とあれば話は別だ。何処か高揚している自分を感じた。例え命の奪い合いに直結していたとしても。
武器が軋む音を聞きながら、ヒカリは口を開いた。
「……ライ・メイの命令か」
「何がですかな?」
槍の太刀筋と同じように端然とした口調で返ってくる。
「俺の前に立ちはだかることだ」
「だとしたら、どうされますか」
「俺は進むだけだ。俺はライ・メイを信じここへ来たのだ。……通らせてもらう」
その言葉を最後に、ヒカリは拮抗していた力をほんの僅かに緩める。意図的とすら読み取るのも難しい行為にクンゾがそれを好機と捉えたか、こちらの体勢を崩さんとばかりに押し込める力をより強めた。判断力、それを確実に遂行する胆力にはやはり目を瞠るものがある。
ヒカリはその刹那に刃を小さく回転させて槍の柄を掬いあげ、刀を僅かに持ち上げた。刀の切っ先は槍を超え……それから不愉快な金属音を鳴らしながら刃を滑らせ槍先を地面に強引に叩きつけ、足で渾身の力で踏みつけた。割れた石畳から粉塵が水気を含んだまま舞い上がると同時に、ヒカリの刀は宿老の首元に迫っていた。
幾重にも重なる口元の皺と獰猛さを宿した眼光は、幾度も死地の経験をしてきた者の証だ。自分の剣の未熟さを感じると同時に、目前の男の腕前に感服せざるを得ない。事実、こちらは肩で息をしているというのに、クンゾはまだ余力を残しているようだ。
未だ衰えぬ気力をヒカリに向けて男は言った。
「やりおる……見事です、ヒカリ殿」槍から片手を離しながら男は続ける。「私はメイ家に仕えております。私の命はメイ家のもの。あなたならその意味、解りますな?」
「意味……だと?」問われて、初めてヒカリの思考が回りだす。戦の最中、いくつもの命がそうした筋道の果てに散らせていることが過ぎる。「まさか……!」
クンゾが矢狭間への合図として上げた右掌を返そうとし――
「――そこまでだ!!」
激昂とも取れる鋭利な女性の声が、凍てついた空気を震わせて城から橋の向こう岸まで貫いた。途端にクンゾの手から力が抜ける。
男から戦意が消えると同時に、ヒカリも刀を下げた。ヒカリが目的としているのは、彼女と言葉で語らい合うためなのだから。
ヒカリは茫然としているクンゾの横を通り抜け、綿雪の合間から姿を現したその女性と相対した。十文字槍の管には稲光のような黄色の布飾りが雪颪ではためく。
ヒカリの記憶に刻まれたものと変わらない、腰まで伸ばした緑黄色の髪を三つ編みにし、茶褐色の両の眼がヒカリを睨んでいた。しかし場所が場所だからなのか、地表を焼き尽くす太陽の元で見ていた時よりも、肌は青白く、血の気が無く見えた。前髪が前よりも伸びたかと錯覚したのは、彼女の目元が見辛くくすんでいたように見えたからなのかもしれない。
ク国を象徴する赤の鎧と、腰元に巻かれたメイ家である証である濃紺の布地が、感傷を呼び起こす。それは相手方も同じようで、発した声にはどこか重たく湿り気があった。
「ヒカリ……三年前、戦で別れて以来か」
「ライ・メイ……」
こうして彼女に呼びかけるのも三年ぶりということになる。前は自然とできていたことのはずなのに、喉の奥で目に見えない異物が引っかかっているような気がする。それはたった今ヒカリの喉元に入ってきた、彼女への違和感。
それを振り切るように、ヒカリは刀を地面に置いて、改めて彼女を見据えた。
ヒカリは信じていた。たとえメイ家がク国の拡充のためにこの雪国へと移ることになったのであっても、この地の内乱を力ではなく穏やかに収めたその心には、父と同じく平和を望んだものがあったからこそだと。
「ク国は、我が兄ムゲンに奪われた。奴を倒し、国を変えたい。そのためには……疾風迅雷と呼ばれたその豪槍、そしてメイ家の力が要る」
自然と、足が数歩前へ出ていた。べちゃ、と履物に踏まれた雪が鳴る。
「ライ・メイ……どうか俺に力を貸してくれ」
ヒカリが言い終わるか否かで、粒の大きい雪が突風に吹かれ無秩序に舞った。否応にもライ・メイとの距離感を意識する。橋の上に落ちてきた沈黙に耐えきれず、一歩、また一歩と彼女との距離を縮めようとし、
「これ以上近付くな、ヒカリ」鋭く返ってきたのは砂漠の夜よりも、この雪山よりも冷酷なものだった。「私はもう、友ではない」
「なに……どういうことだ、ライ――」
ヒカリの声を遮ってライ・メイは槍を構えた。その穂先はヒカリの脳天に向いている。戦場にいた時の感覚がまた戻ってくる。肌を打つこの感覚は、殺気を捉えた時のものだ。咄嗟に右手が左腰に伸びる。打刀もそれを仕舞う鞘も無いそこには、懐刀しかない。真正面で槍と向かい合うには、あまりにも不利な代物である。しかし、刀を拾いに行く気は最初から無かった。ヒカリの目的は友との語らいであり、敵との戦いなどではない。
「ムゲン陛下より仰せつかっているぞ……王子を捕えたなら即刻処刑せよ、と」
ヒカリは目を見開いた。あのムゲンを陛下といただいている。今本当に目の前にいるのはあのライ・メイなのかとすら思った。かつて戦場で背中を預けて鼓舞し合い、そして戦の無い世を願っていた友が、世を血で染める暴君に従い己を殺すと言っている。信じ難いことだった。
なんとか殺気を突き放して手から武器を放す。その手が強く震えていた。リツと同じ過ちを、ここでもしなければいけないのか。リツと同じように、あの砂漠の街が燃えた様を許容しているのか。
ヒカリは頭の中で言葉が浮かぶ限り、声を荒らげていた。
「何故だ……! ムゲンは非道だ! 城下街を焼き、多くの民が死んだ! 我が父ジゴも兄の凶刃に斃れた! そなたも信じていたはずだ、戦の無い世を……! ……ムゲンの元ではそれは望めまい。俺は奴を……ムゲンを討ち、国を変えたいのだ、ライ・メイ……」
「我が信ずる槍よ……」
だからか、ヒカリは咄嗟に反応ができなかった。彼女が得意とする、雷の魔法を擁した技が放たれるのを。
「空を切り、敵を裂く雷となれ!」
言下、砂漠の太陽を錯覚させるかのような白い稲光が閃き、轟音が雪崩れて天上の重苦しい雲を破いて落ちる。視覚と聴覚とを破壊するような情報量に、反射的に、というよりかは本能的に直撃を避けてはいたようで、身体を焼き尽くさんとする稲妻は橋に叩きつけられて粉塵を巻き上げた。
だが、その衝撃を受けた橋が悲鳴を上げて砕け散り、粉塵の遮られた感覚の中でヒカリの身体が思いもしない事態に迫られた。
(しまっ……)
唐突に足元が消失し、宙へと投げられ落ちていく。橋の欄干に置かれていた剣士の石像が身体と構えていた剣を真っ二つにしているのがヒカリの視界の端に映った刹那、頭に強い衝撃を受け、そこで意識が途切れた。
暗転した世界の中で、彼女の遠い日の誓いが聞こえたような気がした。
「私は……メイ家を守る」
――兄の代わりに。他の全てを捨ててでも。
山が雲よりも高い位置にある。
この地方に来て真っ先に目を奪われた光景は地勢の低い港町や砂漠等では到底見られない景色である。途方もない高さで流線を描いている山脈は真っ白に染まり、中程で姿を隠してしまっている。
目指している街の端は小一時間前から見えているが、一向に辿り着かない。既に何度か足を運んでいるだろう人物達にその過酷な道のりは事前に聞いてはいたものだが、いざ直面すると歩きにくい雪山に恨みの念が出ないわけではなかった。
この地方特有の厚着を羽織っても尚、肌を突き刺してくるような寒さに、とりわけ暖かな島で育ったオーシュットはしきりに「さぶー……」とか「うーマヒナあったけー」とかぼやいては、相棒の梟を強く抱き抱えて足蹴にされている。
さっきからその様子を斜め後ろから、華奢な女性が口を尖らせて羨ましげな視線を向けている。微笑ましい気持ちになって、思わず声をかけてしまう。
「ソローネ、我慢しないでいいのに」
「別に我慢なんか……」
普段は鋭い目を丸くして、勢い余って言葉が漏れ出てきた。
「ふふ、気持ちは解るわ」尻すぼみになった彼女の台詞を継ぐようにキャスティは頷いた。「じゃあ私とくっつく?」
「ば、」冗談交じりに言うと、今度は盛大に顔を逸らされた。襟元を寄せながら、「……それはヒカリに言ってやればいいのに」
先頭を歩くヒカリ、パルテティオ、アグネアの三人の背中に自然と視線が向かうが、それも一瞬でキャスティは問い返した。
「あら、どうして?」
仲間の中でも特段に彼が薄着なわけではないので、どうして彼を名指しにしてきたのか解らなくてきょとんとして訊き返した。
「うーん、まだ早いか……」
と人物指定してきた彼女の方はキャスティの問いには答えず、何故か苦い顔をしている。気分を悪くしてしまった理由に思い当たる節がないのが少し申し訳なくなったので、ソローネに微笑みかけながら、
「ソローネは私とじゃ嫌かしら?」
「そういうわけじゃないけどさ。こう寒いんじゃむしろ有難いけど、歩きにくいし、咄嗟の事態に対応できないから……気持ちだけもらっとくよ」
もっともな言い分で返されてキャスティも納得せざるを得ない。彼女の勘に助けられたことはこれまでの旅でも数えきれない。
「……ま、王子様もピリピリしてるだろうからね」
こちらは言葉の額通りの意味で言ったのだが、どうやらソローネは別問題も含んでいるものだと捉えられたらしく、彼女の思考そのまま会話を続けた。「私も仲間だと思ってた奴と命を懸けてここにいるから、だからなんとなくヒカリの気持ちが解るよ。今のヒカリに纏わりついてる空気は重くて……潰されそうだ」
ウィンターランド。一年の多くが雲に包まれ雪が舞っているこの地域に、キャスティと同道している仲間七人は来ている。ヒカリが国を牛耳る兄へ反旗を翻すための足掛かりとして、ライ・メイという旧友を訪ねるためであった。
その人物の事情は大陸違いで住んでいたヒカリよりも、東大陸に住み教会の内部事情にも精通しているテメノスの方が余程詳しかった。
テメノス曰く、この土地は雪国故に資源に乏しく大なり小なり内紛が絶えなかったそうで、ここ最近その数が減っているのは治安平定を進めているメイ家の進出があったからだという。「本当は我々教会が秩序を作るべきなんですけどね、嘆かわしい限りです」と溜め息交じりに締めたのを、キャスティは考え事をしながら聞いていた。
過去から断絶され孤独から始まったキャスティの記憶には、知人と言える者達はいない。敢えて今言えるのであれば、記憶を失くし漂流した先で出会ったマレーヤは同じエイル薬師団で活動をしていたはずなのだが、再会した彼女の方は昔馴染みだったという態度ではなかった。彼女との関係性は、依然と掴めずにいるままだ。
そんな身であるからか、これから出会いにいく女性の話を聞いて、少しだけ心がざわついた。かつての友を求めて旅をするヒカリを少し羨んでしまう気持ちがあったのだという結論に辿り着いた。
「あ」突然、隣にいたソローネが声を上げる。「ごめん、服絡まったかも」
くい、と軽く引っ張られる感覚があり、キャスティの胸元から僅かな圧迫を感じた。袈裟懸けにしたベージュの鞄の何処かが、ソローネの服に引っかかったらしい。
「お、取れた……かな?」
独り言ちながらソローネが手早く解決させる。手先の器用さに感心しながら、キャスティは言った。
「ごめんなさい、私の不注意で」
「全然。誰が悪いとかじゃないって」そっと絡まった物から手を放しながら、彼女は続ける。「ついでみたいになるけど、それって何か訊いてもいい?」
引っ掛けていた平べったい石が彼女の白い手から滑りキャスティの鞄に触れる。雫の先を曲げたような、獣の爪のような、単純な言葉に表すならばそんな形の石で、太陽を削り取ったかのような暖かみを持った琥珀色をしている。
「これ、お守りなの」
「お守り。綺麗な石だからちょっと解るかも」
短い相槌を打って、彼女はそれ以上は何も訊かなかった。過去に触れるものじゃないかと気にかけてくれているのだろう。否定してもいいものか、と考えているうちにソローネは後ろを歩いていたオーシュットに声をかけられて傍を離れてしまった。
これはソローネを含めた旅の仲間達と出会う前に貰った物だ。記憶を失った自分が西大陸に流れ着いた、その日から大切にしている物。
そっと手を離して鞄からしっかりぶら下がっていることを確認し、キャスティは改めて視線を正面に向けた。
大昔に建造されたという巨大な岩壁に囲まれた、二つの大きな勢力がいる雪の街ストームヘイルに辿り着くには、もう少し時間がかかるようだ。
「お断りします」
八人が巨壁の街に着いた時には、もう太陽は山の向こうへと沈んでしまっていた。
酒場で夕食を終えてから宿場で二人部屋を四部屋取り、八人は男性部屋のうちパルテティオとヒカリの部屋へと集まった。
そこで真っ先に発したヒカリの意見に異を唱えたのはテメノスだった。暖炉の中から薪が焚かれる乾いた音が八人の背後で控えめに鳴っているのは、この部屋の中での空気が重く沈んでしまっているからだろう。
テメノスは絡まることを知らない直毛の銀髪の下で、話の中心にある青年を睨めつけていた。それも自明だと言えるかもしれない。
キャスティですら信じる、とは一概に言いきれる話ではなかった。
ヒカリが一人でライという人物へ話をつけに行く、ということは。
「あなたが知人を信頼しているのはよく解ります。ですが、私はあなたの知人まで信頼しているわけではない。ヒカリの知人はク国の事情についても明々白々に知っているはず」つらづらと言った後にテメノスは端的に、声音に殺気すら込めて、「ならば、あなたはお尋ね者です。死にますよ」
感情を捨てきった事実だけを公然と言い放った。
しかし、対面に座っていたヒカリは全ての言葉を受け止めても尚、堂々と座っている。琥珀の瞳の輝きは鈍ることがなかった。
「俺は死なん。友のため、志は必ず果たす」
ヒカリは正座と伸びた背筋を、ねじ曲げることは金輪際叶わないとでも言うように崩さない。動揺しているのは話を聞いている仲間達の方で、特にパルテティオとアグネアが固唾を呑んでいる音が聞こえてくるほどだ。
対面でその琥珀の眼差しを受け止めているテメノスは、やがて小さく息を吐いた。外で出していたならば煙のように彼の視界を覆っていただろう。
「……そうですか。ではもう止めませんよ。ご自由にしてください」
冷ややかに言い放って、常に冷静沈着に物事に対応するテメノスにしては珍しく、乱暴な足音を立てて部屋を足早に飛び出した。
「お、おい、テメノス……」
咄嗟に腰を浮かせたパルテティオが、気まずそうに周囲に視線を投げた。キャスティは彼の背中を叩いて、
「行ってあげて」
パルテティオが上着を引っ掴んで部屋を出る。アグネアも「上持ってくる」とパルテティオに声をかけながら後を追った。乱暴に扉が閉まると、先程と大きく変わらないはずなのに妙に居心地の悪い静けさが訪れる。
薪が乾いた音を立てるだけの、誰かと視線を合わせることも躊躇われるような中で、ソローネの黒紅色の瞳が話の中心人物を射抜いていた。
「……ヒカリ。あんたの言うことは解るけど、あいつの言うことも」
「解っている。テメノスの言うことは」ソローネの言葉を遮った声は冷静だった。「だが、俺は刀で語りに来たのではない。誠意を見せなければ話し合いの場すら望めまい」
そう言った横顔は、先程のテメノスの殺気に優るとも劣らない、決意に満ちたものだった。
ソローネの言う通り、キャスティにもテメノスの感情は理解できた。テメノスは自分達と出会う前、真実の追求を共にしていたクリックという青年をこの地で亡くしていると聞いた。行動を共にしていたというアグネアやソローネ曰く、正義感が強い、品行方正といったところには、初々しさは残るものの確かに聖堂騎士といった職業に適していた人物だったという。少し、ヒカリに似ているところがあるとも言っていた。
しかし、その正義感による彼の行動が不幸を招いてしまった。テメノスは彼の背中を押したことをひどく悔いていたし、更に過去にも同じような知人がいたとも零していた。
彼の頭の中で、ヒカリの提案は二人の行動と同じに映るのだ。普段は冷静なテメノスが激情を表に出してしまうのも無理のない話だった。
「……そ。なら私は何も言わないよ」
と言ったきりソローネも黙り込んだ。元々口数の少ない彼女ではあるが、他人が決めたことに口を出すことはもっと少ない。それは一方で、彼女自身が行うことに口を出されたくない、という意味合いもあるのかもしれない。キャスティがソローネと出会って間もない頃には、命を犠牲にするような賭けを平気でしていたくらいだ。彼女の根底には誰にも縛られたくないという感情が渦巻いているようにも思えた。
「すまない、友たちよ。俺の我儘で振り回してしまっているな」
先程とは打って変わって柔らかな物腰でヒカリは見回した。当然、キャスティとも目が合う。自分はどんな顔をしているのか、表面上は少なくとも彼を肯定している顔をしていると思っていた。自信はあまり無いけれど。
何か言おうとして、しかし先に口を開いたのは旅の仲間で唯一の獣人であるオーシュットだった。獣人の特徴である頭の上の耳をぴんと立てて、
「わたしは良いと思うよ。やろうとしてる本人が一番後悔しないやり方の方がさ」
胡坐の中心にいる梟のマヒナの毛を整えながらオーシュットは今日の天気を語るような調子で言う。この部屋に来てから彼女らは一番温かい暖炉の目前を離れようとはしない。
「それにひかりんは強いから大丈夫だよ。ね、おっちゃん」
「……分析は相対的なものだ。相手の規模や練度を知らねば解は出ん」
「うーん、確かに強いヤツを狩る時には大勢でやる必要があるもんなー。でも、ひかりんは狩りに行くんじゃなくて友達に会いに行くんでしょ?」
「ああ」
「喧嘩をしにいくわけでもないもんね?」
「そうだ」
凝然とした態度を崩さず、ヒカリは答える。オーシュットはその回答も解りきっていたかのように笑顔のまま頷いた。
「うん、わたしからはそんだけ」尻尾を揺らすオーシュットは、隣に座る大柄の男の横腹をつついた。「次はとっつぁんの番だよ」
「……」
彼女の突然の行動に一切動じることはなく、オズバルドは無言でヒカリに布袋を差し出した。男は青年からの訝しげな気配を受けて、初めて説明が必要なのだと気付いたように口を開いた。
「何かあればこの中に入っている魔法石を割れ。魔法石の研究をしている時に作った花火弾だ。割ると花火が出て、遠方にいても判る」
一頻り説明だけして満足したようにまた会話が止まる。やや言葉不足だが、これが打ち出された時は駆けつける、ということなのだろう。
「花火、か。害は無いのだな?」
「身体に害はない。俺が検証している」
「ありがとう、オズバルド。それでも使うことのないように祈っていてくれ」
「……」
ヒカリのお礼に、オズバルドは小さく頷いた。たったそれだけではあったが、彼の気遣いはこの場にいる者は感じていることだろう。
自分は、どうだろうか。
キャスティの中にはこれといった明確な解は無い。きっと自分の答えは結果の後にくっついてくる臆病者なのだ。意思がなければ意見を言う権利もないだろう。
まだ発言をしていないキャスティに自然と視線が集まっていたので、変に気を遣わないように「ヒカリ君」と呼びかける。自分が思っていたよりも落ち浮いた声色だった。「怪我をしたら私が治すから。だから、戻ってきてね」
「……ああ、必ず」
噛み締めるようにヒカリが言ったのを最後にそれ以上交わす言葉もなく、その場は解散することとなった。
キャスティはソローネと二人で冷え冷えとした廊下を歩いていると、反対側からパルテティオとアグネアがやってきた。
「俺はダメだ……不貞寝する」
「さっきからずっとこう言ってるの。そりゃテメノスさん、顔色一つ変えずに帰れしか言わなかったから仕方ないかもだけど」
だいぶ冷たくあしらわれたらしく、すっかり意気消沈していた。身体の冷え切った二人を労わって、既に暖まっているオズバルドとヒカリの相部屋に行くように提案して就寝の挨拶を交わして別れた。
戻ってきた火の無い部屋は冷え切っていて、廊下と大差ない。ソローネは「さむさむ」と口走りながらランタンの火をすぐに暖炉にも移すと、乾いた薪の音が心地良く部屋に響き始める。
「ありがとう。本当にこの寒さは特別ね」
キャスティは手袋の外した手に息を吹きかけながら、ソローネに話しかける。
「キャスティ」ランタンを鏡台の上に置いてソローネは椅子に座り込んだ。「テメノスがキャスティに酒場に来てくれって」
「テメノスが?」
「さっき出ていったのにそう言われたの?」
「うん。符丁でね」
そんなもので二人がやりとりできるのは初耳だったが、キャスティもまだ戻る様子もないテメノスのことは気になっていた。
「一人で……行くなら私はそっちの方が良いと思うな。色々と邪魔だろうし」
「邪魔なんてことはないと思うけれど」
「まあ、でも一人でって言ってたから」
別に気を曲げてるわけでも落としている様子もなく、彼女は淡白に言った。なんだか心持ち急かされてるようなので、キャスティも深くは追及せずに用意を始める。
「……じゃあ、行ってくるわね。鍵は……」
「持ってっていいよ、寝てるかもしれないし」
「そんな遅くに帰ってくるつもりはないけれど……」
外套を羽織り、鞄や身なりを一度確かめる。扉に手をかけようとして、
「そういえば、王子様も寝る前にメイ城見てくるって言ってたよ」
なんだか目的地を増やされてしまったのだった。
+++++
何処からか朧気な雪が踊るように空から落ちてきている。
気分を鬱屈させるような重たい雲はだいぶその厚さを抑え、皓々とした月が僅かな雲の切れ間から青白い月光が白銀の雪を照らして淡く輝いている。
人通りは既にだいぶ減っており、すれ違うのは欠伸をしながら夜の巡回を行っているメイ家の兵士くらいだ。不自然になり過ぎないように髪と頭巾で顔を隠しながら、ヒカリは街の高台の路地に辿り着いた。ここからなら家屋の隙間からメイ家の城を望むことができた。
岩壁を橋で越えた向こうには比較的規模のある堅固な建物が夜闇に溶け込むように佇んでいる。本国の城と違って飾り気のない風貌だったが、立っている旗は確かに見慣れたク国とメイ家の旗だった。
ここが、メイ家が城を構える地。
(ライ・メイ、そこにいるのか……)
三年前、父が戦を止めるまではよく顔を合わせていたはずの彼女の顔は鮮明に思い出すことができる。だが、どういう表情をしているかまでは読み取れなかった。
メイ家はク国拡充のため、この地を平定する足掛かりに、この雪国に移ったという経緯がある。元々の主命を下したのは父であり、兄の手は及んでいない。しかし、リューの宿場を旅立った時ですら地方中に自分が反乱を起こしたと専ら噂になっていた現実だってあるのだから、この遠く離れた地に、砂漠で巻き起こっている嵐は届いていないのだというのは空頼みなのだろう。
嘆息の跡が風に流されて霧散する。閉鎖的なように見える空はどこまでも途切れることがなく、遠い雪国の地まで来てもそれは変わらない。
それを意識して、ヒカリの背筋が僅かに凍った。三年という月日を経て穏やかになった祖国を見てきたはずなのに、ずっと追われているような感覚がある。
ふと背後に気配がして、ヒカリは思わず腰に佩いた刀に手を伸ばして振り返った。頭に被ったフードが煽られて脱げ、旋毛で結った髪の毛がヒカリの視界の邪魔をする。
その向こうから、ふわりと鼻孔を擽るのは彼女のいつものにおい。家々で薪が焚かれているにおいに混じって、彼女が扱う薬草達の香りがした。曇天の元でもなお眩く見える金色の髪がフードの下から覗いている。
「……キャスティ」
彼女の空色の瞳は映すものを反射するものの影響か鈍く、ヒカリの姿もぼやけて見える。
キャスティは微笑を浮かべた。控えめに手を挙げて呼びかけに答えると、隣に立ってヒカリと同じように視線を向ける。
「立派なお城ね」
彼女の呟きも、ヒカリの吐息と同じようにこの国を流れる冷風に流されていく。
「ああ。あそこには俺の友がいる。もう三年も会っていない……友が」
言葉にして、喉元で声が堰き止められているような感覚がした。知らず不安になっているのだろうか。
「あなたは考え事をしていると目が寄るわね」
「む」
急にキャスティから飛び出た自分の知り得ない自分の情報に、瞬きを何回もしてしまう。世界が明滅して、切り取られた世界がその度に網膜に焼き付く。視界の端に映り込んだ女性が頬を上げて唇を緩める様が段階的に変化する。
今度こそ、本当に目が寄っていた自覚がある。その様を見て、キャスティは両肩を揺らしてくすくすと笑った。時々こうして妙に子供っぽいところを見せるのは彼女なりの人付き合いの手段の一つなのだろう。老若男女問わず相対して治療を進めていかねばならない彼女から学ぶべき点は多い。
「……会うのが、心配?」
一しきり笑い終えた彼女は、そう切り出した。ヒカリは首を横に振った。
「ライ・メイは心強い友だ。俺は信じると、そう決めたのだ」
「そう」
端的に彼女は呟いた。彼女のその横顔に何かを問うのをヒカリは躊躇った。その顔は頭上の曇天のように陰りを落としている。心配という感情を抱えているのはヒカリよりも彼女の方のようだ。キャスティを含めた旅の仲間はライ・メイのことを知らず、彼女の情報は客観的に見た立場とヒカリの主観の入った像のみで、信頼を得よというのは無理もない話である。
「……俺にも、聞かせてくれ」ヒカリは自然と口を開いていた。「マレーヤはどういう者なのだ?」
キャスティは驚いたように顔を上げた。話の矛先が急に自分に向いたことよりも、ヒカリの言い方の方が気に障ったようだ。
「どういうって……会ってはいないとはいえ、あの場にいたのにちょっと他人行儀ね」
「ああ、うむ、今のは俺の訊き方が悪かった。あのカナルブラインの時……良ければその時の話をまた聞かせてくれぬか」
噛み締めるように言葉を選んだが、愁いを帯びて伏せた顔はヒカリを映してはいない。
「でも……そうね、他人行儀なのは、マレーヤもそうだもの……」
声を落として、寂しげに話した彼女から改めて聞いた話は、以前から聞いていたものと何も変わらなかった。カナルブラインで出会った女性と薬師として走り回っていたこと、だが彼女とは共に同じ薬師団で活動していたはずなのに、初めて会ったような対応をされたこと。
あの時、同じ街に来訪していたヒカリはマレーヤという女性の存在を知り得ない。だが、失った記憶の手掛かりとしてキャスティの心を支えている彼女のことを聞くたびに、胸の奥が縮むように疼いた。
「さて、宿に戻ろうか」
反抗するように、ヒカリは手を握りしめる。外気に晒されて凍てついた指先の感覚は薄い。気付けば掌に爪跡が残る程の強さが籠っていたから、キャスティに掌が見えないように右手はこの地に来る前に買った外套の隠しに、左手は腰に佩いた刀の柄頭に置いた。
突拍子もない申し出に、キャスティは小首を傾げる。
「もう良いの? もしかして私が来ちゃったから?」
「いや、一目見てもう戻ろうと思っていたところだ。風邪を引いてしまっては、俺は何しにここに来たのか見失ってしまうからな」
「ふふ、そうね。でも私は買い物してから帰るわ」
「買い物?」
「薬草とか、買っておきたいなって。早く帰れたら身体が温まる飲み物を持っていってあげるわね」
空から降る純白の雪に残った自分の足跡を、復路でも踏む。油断するとすぐに足元を掬われる極寒の地は、ヒノエウマとはまた違った厳しさを孕んだ土地だ。水はこんなに地面に溢れるほどあるのに、形を変えているせいで土に日は届かず、砂漠と同じく作物は育ちにくい。言を俟たず、少ない資源を取り合う関係にあるこの地の人間達も、ヒノエウマと同様に内紛は絶えなかったらしい。
だが、それを収めたのがこの地に移ったメイ家だと言う。つまりこの地は、兄が反乱を起こすまでの……父が戦を止め平穏の道を歩み始めていたク国と、同じ道筋を辿っているのである。
かくして、ヒカリは信じていた。
次の日の朝になってもテメノスと顔を合わせることはなかった。
「なんか俺が起きた時にはもういなくてよー」
幸か不幸か部屋は元々別室が充てがわれていて、テメノスと相部屋だったのはヒカリの目の前に座り込み大きな口でパンを放り込んでるパルテティオである。
「書き置きとかはなかったの? こっちはあったけど」
と次に口を開いたのはパルテティオの隣に座るソローネだった。彼女の言い分を聞き、肩肘を立てて青年は唸る。ホットミルクを喉に流し込みながら愚痴を零した。
「こっちはそんな気遣い無えなあ……やっぱキャスティはマメだなあ」
「マメでも、これだけシンプルだと何も判らないけどね」
八人と一匹の旅の仲間も、今朝集まったのはそのうちの六人と一匹。早朝からテメノスとキャスティは宿を出たらしいが、取り残された方は特に何も聞いていない。ソローネの言っていた書き置き、というのも『テメノスと街中に出掛けてきます。夕方に戻ります』と簡素なものである。買い物をするにも店は何処も開いていない時間だ。
キャスティのことも心配ではあるが、テメノスもこの街の聖堂騎士団との相性が悪い。教会内部の派閥争いに照らし合わせると、テメノスは敵地に乗り込んでいるようなものである。
だが、ヒカリも二人の行先にばかり構ってもいられない。自国の友たちのため、一刻も早くメイ家の助けを得ることが必要なのだ。今日の行く先を変えるわけにはいかない。
窓から外を眺めると、そんなヒカリの希望の未来を遮るかのように分厚い雲から数えきれない程の雪が降り注いでいた。
雪に隠された岩場が頑強だからこそ成立するような、横に並んで十人が渡れようかという大橋がそこにはあった。頭上は昨日と変わらない曇り空で陰影は薄く、端々に積もった雪も砂や土に汚れている。人の往来によって橋の隅以外は雪が溶けており、土と混じって濁った水溜りが出来ている。
橋の向こうには何百年分の歴史を湛えた、威容を放つ城がある。石作りである性質上元々色素が欠けているが、それを特別着飾っている様子はない。交差する槍と稲妻を印した旗が、極寒の風の煽りを受けるのみである。
もう陽は昇っているというのに、親柱には篝火が煌々と焚かれている。左右の端に設置された欄干の上を一定の距離を持って戦士を象った石像が左右に配置されているが、どうもこれはメイ家が来る以前から置かれている物らしく風雪に晒されて角が欠けたり削れたりしている箇所が見受けられる。
所有者の所在が宙ぶらりんになっていたこの城を、今はメイ家の城として利用している。元々賊の巣窟になっていたことと内紛を収めたのを口実にしているが、その態度には街の人からの賛否が分かれているらしい。やや腐敗しているとはいえ聖堂騎士団の本部があり、そことの争いを危惧している者がいるのは判りきったことだった。
橋には既知の通り、門兵が置かれていた。一様に濃紺の外套を身に着け、橋の傍で立ち尽くす一人の人間に刺すような気配を投げてきている。
嘘偽りで飾るつもりは毛頭ない。ヒカリは前へと歩み出た。何者かと問われる前に、雪除けの頭巾を脱ぎ声を張り上げる。
「ク国の王子、ヒカリと申す! ライ・メイ殿に謁見願いたい!」
晒されたヒカリの顔と名乗りに、しかし相対している兵は動揺を見せなかった。両手に槍を持ち、忽ち臨戦態勢へと入る。
「俺に戦いの意思はない」
諸手を頭の横に挙げるが、兵二人の態度に変わりはない。むしろヒカリが歩みを進めるにつれ、槍の切っ先はこちらへと傾いてきている。
「それ以上、動きなさるな。無抵抗で首を飛ばされたくないでしょう」
一兵から告げられたものではない深みのある声に、ふとヒカリは足を止めた。聞き覚えのある声だった。
「……ここは通せん、ヒカリ殿」城の門から出てくる影が一つ。その中でも一際秀でた貫目を持った男が告げた。「ヒカリ殿、そなたを拘束する。従わねば、力ずくでな」
乱れ舞う雪の中で、刈り込まれた麦藁色の髪が獣の鬣のような存在感を持っていた。同じく蓄えられた顎鬚の奥には深い皺が刻み込まれているものの、年齢を重ねて尚も鋭い闘気を纏う様はヒカリの毛を逆立てさせた。名は、クンゾ。ライ・メイの槍の師匠だったはずだ。
顔の横にあげた両手を今すぐにでも下ろせと脳が発しているのを、ヒカリは追い払うように声を上げた。
「そなたは、ライ・メイの家臣だったな。戦いたくはない、俺は語らうために来たのだ」
ヒカリを射抜く眼差しに揺らぎは無い。宿老は槍の柄で石橋を叩いた。
「ほお、左様か。では、その手を下ろしてくだされ。語らいましょうぞ。剣にて……」
言下、門兵の二人が駆け出した。混じり気のない、槍の基本を忠実に守った二本の槍の突きが同時に襲い掛かる。
ヒカリは咄嗟に刀の鞘を腰布から引き抜いた。一歩前へ出て上体をずらし、峰に当たる部分で左から飛んできた槍を弾く。その槍の切っ先が右手方から現れた槍にぶつかり標的が逸れる。
蹈鞴を踏んだところへヒカリは姿勢を低くして踏み込み兵の懐に入り、手刀で肘を狙った。尺骨神経に走った激痛で兵は槍を落とす。
その槍が地面に落ちる前に柄を取って奪い取り、痛みに呻く男を蹴りで除けると同時に、身体を回転させる。ヒカリの身体と共に回転した槍は左から来る男の首元に叩き込まれ、男の身体を吹っ飛ばした。手から離れた槍が派手な音を立てて回転し、橋の下へと落ちていく。
瞬く間に訪れた剣戟と静寂に、クンゾは五歩程先で笹穂槍を隙も無く構えたまま素直な感嘆を漏らした。
「殺気も得物も出さずに、二人を戦闘不能とさせる技、見事ですな」
ヒカリは一つ息を吐く。身体の奥底で温まった息は湯気のように吐き出されて霧散する。
「……通らせてもらえないか」
「先程申しました。我が国では語るべきは口ではなく――武器です」
それは正に、雷鳴の如き槍使いであった。正確無比な槍先は迷わずヒカリの喉元を狙いすます。ヒカリはその動きを見るよりも早く石突を、刀を抜いて弾いていた。無理な姿勢で受け止めたせいか手に痺れが走り、石畳の上で溶けた氷に反射的に後ずさったヒカリの足跡が刻まれる。
晴れている日はぎらぎらと太陽光を乱反射させる積雪も、こう曇っていれば返照は無いも同然である。それでも一筋の光を放つクンゾの槍先は、疾風迅雷を掲げるメイ家を表しているかのようだ。
ヒカリの姿勢が整う前に、槍が残像すら見せずに迫る。なんとか刀で受け止めるが力に押し負け、またヒカリは身体を捩って槍先を躱して数歩下がった。果然、片手では攻撃を捌くにも限界がある。
その時、もう戦意が欠けたはずの別の男から気配が迫った。ヒカリの背後を狙った攻撃を回転して避け、男の脳天に鞘を投げつける。先程首元に槍の柄を受けた兵だが、今のヒカリの一撃でようやく気絶したらしい。それを意識の端で確認して、ヒカリは刀を正眼に構えた瞬間にクンゾの元へと踏み込んだ。直後、ヒカリがいた場所に風切り音と衝撃音が聞こえた。城の矢狭間から矢を射かけてきたからである。
「流石、一対多を熟知していらっしゃる」
「そなたに迫れば矢は射られまい?」
「……ふっ」
クンゾがヒカリの刃を涼しげに何度か受け流し距離を取ろうとする。かと思えば、急に攻め手に入って急所へと牙を向ける。油断のならない攻防が二、三度続き、刀の刃と槍の中程が交差し、互いに押し合いになった。
最近は魔獣退治の方が多く、人とこうして刃を交わすことは数える程である。旅の仲間の剣として時には対人にも振るってきてはいるが、しかし達人級の腕前とあれば話は別だ。何処か高揚している自分を感じた。例え命の奪い合いに直結していたとしても。
武器が軋む音を聞きながら、ヒカリは口を開いた。
「……ライ・メイの命令か」
「何がですかな?」
槍の太刀筋と同じように端然とした口調で返ってくる。
「俺の前に立ちはだかることだ」
「だとしたら、どうされますか」
「俺は進むだけだ。俺はライ・メイを信じここへ来たのだ。……通らせてもらう」
その言葉を最後に、ヒカリは拮抗していた力をほんの僅かに緩める。意図的とすら読み取るのも難しい行為にクンゾがそれを好機と捉えたか、こちらの体勢を崩さんとばかりに押し込める力をより強めた。判断力、それを確実に遂行する胆力にはやはり目を瞠るものがある。
ヒカリはその刹那に刃を小さく回転させて槍の柄を掬いあげ、刀を僅かに持ち上げた。刀の切っ先は槍を超え……それから不愉快な金属音を鳴らしながら刃を滑らせ槍先を地面に強引に叩きつけ、足で渾身の力で踏みつけた。割れた石畳から粉塵が水気を含んだまま舞い上がると同時に、ヒカリの刀は宿老の首元に迫っていた。
幾重にも重なる口元の皺と獰猛さを宿した眼光は、幾度も死地の経験をしてきた者の証だ。自分の剣の未熟さを感じると同時に、目前の男の腕前に感服せざるを得ない。事実、こちらは肩で息をしているというのに、クンゾはまだ余力を残しているようだ。
未だ衰えぬ気力をヒカリに向けて男は言った。
「やりおる……見事です、ヒカリ殿」槍から片手を離しながら男は続ける。「私はメイ家に仕えております。私の命はメイ家のもの。あなたならその意味、解りますな?」
「意味……だと?」問われて、初めてヒカリの思考が回りだす。戦の最中、いくつもの命がそうした筋道の果てに散らせていることが過ぎる。「まさか……!」
クンゾが矢狭間への合図として上げた右掌を返そうとし――
「――そこまでだ!!」
激昂とも取れる鋭利な女性の声が、凍てついた空気を震わせて城から橋の向こう岸まで貫いた。途端にクンゾの手から力が抜ける。
男から戦意が消えると同時に、ヒカリも刀を下げた。ヒカリが目的としているのは、彼女と言葉で語らい合うためなのだから。
ヒカリは茫然としているクンゾの横を通り抜け、綿雪の合間から姿を現したその女性と相対した。十文字槍の管には稲光のような黄色の布飾りが雪颪ではためく。
ヒカリの記憶に刻まれたものと変わらない、腰まで伸ばした緑黄色の髪を三つ編みにし、茶褐色の両の眼がヒカリを睨んでいた。しかし場所が場所だからなのか、地表を焼き尽くす太陽の元で見ていた時よりも、肌は青白く、血の気が無く見えた。前髪が前よりも伸びたかと錯覚したのは、彼女の目元が見辛くくすんでいたように見えたからなのかもしれない。
ク国を象徴する赤の鎧と、腰元に巻かれたメイ家である証である濃紺の布地が、感傷を呼び起こす。それは相手方も同じようで、発した声にはどこか重たく湿り気があった。
「ヒカリ……三年前、戦で別れて以来か」
「ライ・メイ……」
こうして彼女に呼びかけるのも三年ぶりということになる。前は自然とできていたことのはずなのに、喉の奥で目に見えない異物が引っかかっているような気がする。それはたった今ヒカリの喉元に入ってきた、彼女への違和感。
それを振り切るように、ヒカリは刀を地面に置いて、改めて彼女を見据えた。
ヒカリは信じていた。たとえメイ家がク国の拡充のためにこの雪国へと移ることになったのであっても、この地の内乱を力ではなく穏やかに収めたその心には、父と同じく平和を望んだものがあったからこそだと。
「ク国は、我が兄ムゲンに奪われた。奴を倒し、国を変えたい。そのためには……疾風迅雷と呼ばれたその豪槍、そしてメイ家の力が要る」
自然と、足が数歩前へ出ていた。べちゃ、と履物に踏まれた雪が鳴る。
「ライ・メイ……どうか俺に力を貸してくれ」
ヒカリが言い終わるか否かで、粒の大きい雪が突風に吹かれ無秩序に舞った。否応にもライ・メイとの距離感を意識する。橋の上に落ちてきた沈黙に耐えきれず、一歩、また一歩と彼女との距離を縮めようとし、
「これ以上近付くな、ヒカリ」鋭く返ってきたのは砂漠の夜よりも、この雪山よりも冷酷なものだった。「私はもう、友ではない」
「なに……どういうことだ、ライ――」
ヒカリの声を遮ってライ・メイは槍を構えた。その穂先はヒカリの脳天に向いている。戦場にいた時の感覚がまた戻ってくる。肌を打つこの感覚は、殺気を捉えた時のものだ。咄嗟に右手が左腰に伸びる。打刀もそれを仕舞う鞘も無いそこには、懐刀しかない。真正面で槍と向かい合うには、あまりにも不利な代物である。しかし、刀を拾いに行く気は最初から無かった。ヒカリの目的は友との語らいであり、敵との戦いなどではない。
「ムゲン陛下より仰せつかっているぞ……王子を捕えたなら即刻処刑せよ、と」
ヒカリは目を見開いた。あのムゲンを陛下といただいている。今本当に目の前にいるのはあのライ・メイなのかとすら思った。かつて戦場で背中を預けて鼓舞し合い、そして戦の無い世を願っていた友が、世を血で染める暴君に従い己を殺すと言っている。信じ難いことだった。
なんとか殺気を突き放して手から武器を放す。その手が強く震えていた。リツと同じ過ちを、ここでもしなければいけないのか。リツと同じように、あの砂漠の街が燃えた様を許容しているのか。
ヒカリは頭の中で言葉が浮かぶ限り、声を荒らげていた。
「何故だ……! ムゲンは非道だ! 城下街を焼き、多くの民が死んだ! 我が父ジゴも兄の凶刃に斃れた! そなたも信じていたはずだ、戦の無い世を……! ……ムゲンの元ではそれは望めまい。俺は奴を……ムゲンを討ち、国を変えたいのだ、ライ・メイ……」
「我が信ずる槍よ……」
だからか、ヒカリは咄嗟に反応ができなかった。彼女が得意とする、雷の魔法を擁した技が放たれるのを。
「空を切り、敵を裂く雷となれ!」
言下、砂漠の太陽を錯覚させるかのような白い稲光が閃き、轟音が雪崩れて天上の重苦しい雲を破いて落ちる。視覚と聴覚とを破壊するような情報量に、反射的に、というよりかは本能的に直撃を避けてはいたようで、身体を焼き尽くさんとする稲妻は橋に叩きつけられて粉塵を巻き上げた。
だが、その衝撃を受けた橋が悲鳴を上げて砕け散り、粉塵の遮られた感覚の中でヒカリの身体が思いもしない事態に迫られた。
(しまっ……)
唐突に足元が消失し、宙へと投げられ落ちていく。橋の欄干に置かれていた剣士の石像が身体と構えていた剣を真っ二つにしているのがヒカリの視界の端に映った刹那、頭に強い衝撃を受け、そこで意識が途切れた。
暗転した世界の中で、彼女の遠い日の誓いが聞こえたような気がした。
「私は……メイ家を守る」
――兄の代わりに。他の全てを捨ててでも。
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HN:ヴィオHP:性別:非公開自己紹介:・色々なジャンルのゲームを触る自称ゲーマー
・どんなゲームでも大体腕前は中の下~上の下辺りに生息
・小説(ゲームの二次創作)書いたり、ゲーム内の台詞まとめたり
【所持ゲーム機】
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